追い討ち
「じゃ、キミの出した答えを聞かせてもらおうか」
神のその言葉は、正気に戻ったばかりの魔王のメンタルにダメージを与えた。
「貴様は鬼か? それとも悪魔か!?」
「神だけど?」
「やかましいわっ!」
魔王よりもよっぽど魔王らしい神の所業には愚痴らざるを得ない魔王であった。
「……イリスは……その……」
「その?」
「……この時代のものではない」
結局、魔王は本来の答えとは別のものを告げた。
「ふむ。……で?」
「…………で、とは?」
「おいおい、キミがたったそれだけの答えしか用意できていないわけがないだろう?」
「……」
そんな魔王を神が許すはずもなく。
「さぁ、続けなよ」
「……」
「……やれやれ、仕方ないな……」
「…………?」
「キミが作っていたあの薬……」
「わ、わかった! 言うから!」
神のその一言は、それまで黙っていた魔王を慌てさせると同時に、勇者にも興味を持たせるという素晴らしい力(?)を持つものだった。
「ねぇパッパァ。あの薬って?」
「……魔力を回復させる薬だ」
「でも、それだけなら別に慌てる必要はないよね?」
「……アレには、副作用があるのだ……」
「副作用……?」
魔王は「うわー、興味持っちゃったー」なんて内心で思いつつも、それを表に出すことなく告げる。
「……性別が短時間ではあるが変わってしまうという、厄介な副作用だ。人形の頃はそれでもかまわなかったのだが……」
「パッパァがマッマァになるんだね!?」
「おい神! 貴様のせいで面倒なことになったぞ!」
「あー、そういうのは後でヤってね?」
「やっぱり悪魔だろ貴様……」
要するに、神は丸投げした。
「それはおいといて、続きを聞かせてよ」
「おけるほど軽いものではなくなったがな……」
「ふふふ……パッパァがマッマァに……」
一人……というか勇者だけがトリップしていたが、皆は一致団結して無視する。
「……魔界の王である我は、魔に属するものとそうでないものとを見分けることができる」
魔王は語り出す。
「イリスは、厳密には魔に属するものではないのだろう」
魔王は告げる。
「魔族の血は引いているかもしれない。だが、多くても半分程度だな」
「ふむ。で?」
神もふざけた態度から真剣なものへと変化させ、魔王もまた続ける。
「半分とはいえ、魔族の血を引いているものが魔に染まることなく成長している。これは、はっきり言って異常だ」
己の推測が間違っていることを願いつつ。
「そんなことができるのは、勇者の血を引くものだけだろう」
「天使や神の可能性がないわけじゃないけどね」
「だが、その可能性は捨ててもいいだろう」
「……その心は?」
やはり、目の前に座っている男は、神ではなく悪魔の方が似合っている。
そう思いながら、彼は答えた。
魔界を統一し、かつては魔王様と称えられたこともある彼が、ためらいながら。
「……イリスは……娘だ」
「へぇ。……誰の?」
大きく息を吸い、覚悟を決めて。
一息に告げる。
「我と、勇者との子供……だ」
ついに認知したパッパァ。