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出会い

 大きな部屋の中に、二人の女性がいた。

「本当に、よろしいのですか?」

 長身の女が問いかける。

 綺麗な銀髪を肩で切りそろえており、何故かメイド服を着ている。

 出るところは出ていて、引っ込むところは引っ込んでいる、いわゆるパーフェクトなお姉さんだ。

「もう、決めたことですから」

 そう答えたのは、見た目8歳の女の子。

 こちらは長身の女とは対照的に綺麗な金髪を腰まで伸ばしていた。

 なにやら質の良いマントを羽織っており、先ほどの会話と格好から少女のほうが立場が上だということがわかる。

「……わかりました。もう止めはしません。ご存分に」

 女はそう告げると、一歩下がった。

 少女はさらに一歩前に進み、魔法陣の描かれた地面の上に立ち、常人には理解できない呪文を唱える。

 すると、変化が訪れた。

 魔法陣が突然光りだし、部屋中に男の声が響き渡った。

『誰だ、我の眠りを妨げるものは……?』

「め、メイです」

『……よ、幼女……?』

「失礼な!! これでもメイ様は成人されているのだぞ!」

 メイドのフォローはむしろメイを傷つけている。

「よ、良いのですよ、イリス」

 メイがメイド服のイリスをたしなめる。

『……で、貴様らは何故我を呼び起こしたのだ』

「わ、わたし、力が欲しいんです!」

『力、とは具体的にどのようなものだ?』

「えっと、魔族を支配する力です」

「メイ様はこう見えても魔王なのだ!」

 胸を張るイリス。だが、その言葉は若干メイを傷つけている。

『ほう、メイとやらは現代の魔王であるのか』

「でも、他の魔族の方々は私を認めてくださらなくて……」

『それで我を呼び出したのか』

 部屋に響き渡る声は、何かを考えてから、

『よかろう。では、今日から我がメイを立派な魔王にしてやろう』

 と言った。

「あ、ありがとうございます!!」

『では、我のことは気軽にパパと呼ぶが良いぞ』

「わ、わかりましたパパ」

 部屋になにやら悶える声が響く。

「失礼ですが、貴方はロリコンなのですか……?」

『ち、違うわ! 我はただ娘がいなかったのでな、親心がこう……』

「パパはきっと照れ屋さんなんですよ」

 メイのフォローはイリスと違って暖かい。

『では、そちらの世界での体を用意するのだ』

「……え? 魔法でなんとかならないのですか? パパ」

『残念ながら、我の体はとうの昔に壊れてしまっていてな。それに魔法でなんとかしようとしても、そちらの世界には作用できないのだよ』

「昔は魔王でも今はただのゴミですね」

『無理なものは無理だしゴミじゃないよ?』

 威厳が徐々になくなってきている。

「パパ、用意しましたです」

 いつの間にか、メイが入れ物を用意していたようだ。

『では早速……』

『騙されてはいけないわっ!!』

 今までとは別の、女の声が部屋に響き渡る。

『今まであなたたちが話していた男は、本物の古の魔王ではないわっ』

 やけにテンションが高い。

『め、メイ! 早く入れ物を魔法陣の中心に置いてくれ!』

 男の焦ったような声が響く。

「パパは、偽物だったんですか……?」

『本物! 本物だから!だから早く入れ物を!』

『ダメよ! そいつは偽物なんだからっ!』

「ここは……女の人を信じます!」

『メイ? 違うよね? パパを信じてくれるんだよね?』

「パパを信じるのは後でです!」

『む、娘が反抗期だぁー』

『よくやったわメイちゃん!』

「あ、ありがとうございます……?」

『娘が反抗期……』

 誰にでも反抗期はあるものだというのに、男は一人泣き出す。

 それを見て(?)焦ったのか、女が

『じゃ、じゃあメイちゃん。入れ物を二つ用意してくれる?』

 と言った。

「え? 二つですか……?」

『ええ。こいつを置いていくのは危険なことだと思うの。だからお願い』

「わ、分かりました。では少しお待ちください」

 そう言ったメイは部屋から出て、もう一つ人形を持ってきて魔法陣の中心に置いた。

「準備できましたよ? えーっと……」

『あ、私のことは……そうね、おねえちゃんと呼びなさい』

「わかりました、おねえちゃん」

「……早くこちらの世界に来てくださいよ」

 しびれを切らしたのか、イリスが言った。

『あー、じゃあ今すぐ行くわ。……行くわよパパ』

『なんか我、貴様にだけはパパと言われたくないな』

『うっさい殺すぞ早く準備しろ』

『ま、死ねないんだけどねー』

 軽口を交わしながらも、準備だけは進めているようで、魔法陣が光りだした。

『じゃ、今から行くからね~』

 という言葉とともに、魔法陣の光がひときわ強くなり、一瞬で光が消えた。

「あー、あー。テステス。リンク良好。アメンボ赤いなあいうえお」

「あ、かわいい体じゃない。センスいいわね」

「……我の体、女のものではないか……」

 魔法陣があった場所で、二体のぬいぐるみがひとりでに動き、しゃべっている。

 そう、メイの準備した入れ物とは、お気に入りの人形だったのだ。

「えーっと、どちらがおねえちゃんでどちらがパパなのですか?」

 メイが問いかける。彼女は外見に似合わず怖いものなしのようだ。

「我がパパだ」

 そう告げたのは、メイドの姿をした人形だ。

「わたしがおねえちゃんよ」

 対して、こちらは執事服の姿をした人形だ。

 どちらも女性なのだが、どちらも似合っていた。

「で、お二人はどういう関係なんです?」

「親娘だよ、メイちゃん」

「ちがうぞ? 我とコイツは宿敵、ライバル関係にあったのだ」

「じゃ、じゃあそれってつまり……!?」

「うむ」

 メイド服の人形は少し溜めてから言った。

「我が魔王でコイツが勇者じゃ」

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