第六話 ウィル の無理矢理な日常 3
ストックが、なくなりました、次のやつを、溜めます
じゅうじゅう~! ダンダンっ! ザクザクっ !
「 ツアール、お湯が沸騰したら鍋の昆布を取り除いて鰹節を入れたら、鍋を火からどけて」
「は~いっ! 鰹節はこの木の紙のような物ですか?」
なぜだろう、ロリではないが料理を手伝う女の子て、グッとくるよね。
「鍋底に鰹節が沈んだら布で漉す」
「はいっ! ウィル様」
「長ネギや春菊と白菜は洗ってザク切りにしたら、人参は皮を剥いてから輪切りして茹でる。湯とうしした厚揚げはサイコロ に切ってね」
野菜と豆腐はどこから出したかって?
ツアール達が山奥で助けた、ジパングの僧侶から、お礼にと貰ったんだと。
「はいはい~っ! アサリはどうします?」
「砂を吐かせてるからそのまま塩水に浸けといて」
ツアールは、昆布を取り除いた鍋を火元からどけて鰹節を入れる。
「 ロイガー、ぶつ切りにした鶏肉をお湯に潜らせて霜降りにした後は、魚をサッとお湯に潜らせて霜降りにしてから鱗を取る」
「アイアイサー !このお湯で良いんですね」
ロイガーは言われた通り、鳥肉をお湯で霜降りする。魚も霜降りすると鱗を取る。
ツアールとロイガーが、アイアンクローの事があるのに、嬉しそうに僕のお手伝いしているのには理由がある。
つい先程振舞った亀の手(岩にへばり付いてる、亀の手の形をした海産物)を茹でした祭に出た煮汁を、まず酒で匂いを消し、更に薄口醤油塩で味を調え、溶き卵を加えて半熟になるように火を入れた、なんちゃってカニ玉スープを振舞ったのが原因だ。
最初は亀の手の不気味な形に難色を示してたけど、目の前で美味しそうに食べてる僕を見て、恐る恐る食べてみると態度は激変した。
此方がドン引きする程僕を褒め称え、料理の手伝いを申し出たのだ。
まあいいけど。
手伝ってくれるのはいいんだが、作業の合間に見える、うなじとか服の隙間から見える鎖骨とかが、なんかくる。
ぶんぶんと首を振る。
「子供。あれは唯の子供、僕はノーマル。うん」
視界の隅に居る漁師さん達を見ると、僕と同じように首を振っていた。
お前らもか…。
「どうしました?」
ツアールが下から覗き込む。その可憐な瞳に眼を奪われ、息をするのを忘れる。
バッと眼を逸らす。
顔が火照る。いや違う、違うから。
「どうしたんですか? ウィル兄ちゃん」
ロイガーの声につられ、思わず眼を合わせる。
だめだこの子にもかっ、呼吸が荒くなり汗が流れ始める。
いつものように、感情と記憶を切り離す。
イメージするのは先程の感情、それを刃物で切るように想像する。
訪れるのはいつもの消失感。
ごっそりと無くなったか先程の感情を、記憶としてではなく記録として読む。
「いや別に、ウツボでも捌くか」
「そうですか…」
なにか言いたさそうにしてたが、歯切れの悪そうな感じで押し黙る。
ツアールもなぜか僕を見て押し黙る。
なんだ? まあいい。
漁師さんからいただいたウツボを背開きし、中骨を取り鉄串を刺して皮の方から焼く。その間に濃い口、味醂を6対4の割合で混ぜ、焼いたウツボの中骨を入れて煮詰める。
ウツボは煮付けでも良いんだが、タレにもいいんだよな。
というかなんでここの人(神)これを食わないんだろう?
皮が焼けてきたら鉄串を回しておく。
後で、鉄串が抜けやすくするためだ。
次に身の方を焼き始める。
「貰ったウツボの骨から作った、タレができた」
火からタレをどけ、タレ用の刷毛をつける。
ウツボの身が、ある程度焼けてきたので、タレを塗りながら焼き上げる。
その時、タレの焦げる音と匂いが辺りに広がる。
その香ばしい香りに僕以外、つまりツアールとロイガー、漁師さん達が生唾を飲む。
「あんちゃん俺達にも一口でいいから、食わせてくれねえか?」
「もちろんですよ、唯一人当たりのウツボ の量は少なくなりますが、いいですか?」
「という事は、こっちの料理も食っていいのか?」
「もちろんです、その為に沢山作ってるんです。器とかスプーン、箸は使えないか…フォークの用意を人数分用意お願いします。お酒を飲む方は急いで持ってきて下さい」
「「「「「「「「おおおおっ!」」」」」」」」
歓声が上がり準備の為、皆走り出す。
「さて出し汁12に対して、薄口1味醂1と」
ウィルは鍋の出し汁をあわせる。
「あのウィル様」
「ウィル兄ちゃん」
「うん?」
「私達も食べていいですか?」
「食べたら駄目かな?」
二人共可愛らしくおねだりする。
「そのつもりだけど? 君らもお腹すいてるだろう」
「「やったー!」」
『あーわしは駄目かな』
突然バロンから念話が繋がる。
『バロン先生、今から三十分以内に来れます?』
『無理』
『映像だけお楽しみください』
『鬼畜っ!』
『あんたがな。といか、お姉さんの所でサボってるんですか?』
『…ふ、女体盛て知ってるか? 童貞は知るまい、今から頼むんだ』
『いい加減そのネタから離れてくださいっ!』
『無理だな、貴様が卒業するまで無くならんな』
『こどもかっ!』
『どこから見ても子供だろ』
『似非ショタがあああっ!』
途端に切れる念話。
どちくしょうっ!.
ポンポンと、気がついたら両肩をツアールとロイガーに叩かれていた。
幼女に慰められる僕って、一体…。
それから三十分後、宴会が始まったのは言うまでもない。
ツアール 、ロイガー は、天然の魅了を発揮したっ!。
ウィル 心に、3ダメージっ!
ウィル は自分の心を切り離し、それに耐えたっ!
すみません、冗談です。
双子達は魅力度がかなり高い為、知らず知らず、特定の条件を満たした周りの人間(神)を魅了します。
お読みくださり有難うございました