第十九話 魔人ウィルと過去
遅くなりました。
今回もギャグは少なめです。
「おいアインなんで神と楽しそうにしてんだよ」
僕達のやり取りを見て殺気を混ぜた言葉がドライから出される。
「あの…それはどういう意味ですか?」
ナルちゃんがそう尋ねる。
「お前に聞いてないんだよ雌猫がっ!」
「ふえっ? ふええええええええええええん!」
フィーアの暴言に泣き出すナルちゃん。
「「「「「「「「「「「「泣ーかしたっ!」」」」」」」」」」」」
僕以外の全ての奴等が非難する。
こいつら敵と味方に別れてるのに楽しそうだな…。
「ちょっとっ! ナルをいじめてるんじゃないわよ」
クトウグァが抗議する。
「泣かないの」
座り込んだ僕の胸すがりつき、ぐすぐすと泣くナルちゃんをあやしながら頭を撫でる。
本当によく泣くな~。
「「…」」
ゾクッ。
なんか寒気がしたのでツアールとロイガーの方を見ると、眼が僕を射殺さんばかりに冷ややかに見つめてる。
僕…なにかやったか?
「やめろフィーア」
フィーアをゼクスが右手で抑える。
「ナルちゃんの言葉を借りるわけじゃないけど、どういう事か教えてくれないか?」
ナルちゃんを後ろに庇いつつフィーアとゼクス睨み付ける。
僕の言葉に舌打ちをする僕の別人格達。
「四十年前のネパールの事を覚えてないのか?」
フュンフの言葉に戸惑う僕。
「あの地震の事か?」
残念ながらあの時の事は救助されて気がついたら病院の天井を眺めていたという認識しかない。
「地震…ふん確かにな、その様子だと覚えてないみたいだな」
「何を言ってんだ?」
魔人バロンはアハトの言葉に首を傾げる。
僕も首を傾げた。
『アインこいつらの言葉に耳を傾けるな』
『なんで?』
ヌルの念話に僕は内心で首を傾げる。
『こいつらの記憶は僕達も含めて断片的だ。下手をすれば妙な誤解を生む』
…誤解を生むような事があったのかな?
「なにがあったのか聞いて良いかな?」
『おいっ!』
ヌルの念話を聞き流しつつ尋ねる。
「本当に覚えて無いのか? そいつらの仲間があの地震を引き起こし、生き残った僕達の両親を殺した事を」
ノインの言葉に僕の背筋が凍る。
「待ってください我々神は現実世界に干渉できません確かなんですかっ!」
「例外がいるだろうお前達には」
ロイガーの言葉を否定するゼクスの言葉に僕達は沈黙する。
確かに少なくとも少なくとも五人否、神だから五柱というべきか干渉できる者がいる。
現実世界を管理する神に、アザートス、ヨグソトース、この世界を代理で管理するハスターそして…。
チラリと後ろを見ると唖然としているナルちゃん。この娘もだ。
「出任せだなあ」
ゆらりと今まで沈黙を守っていた赤い色で装備を統一した戦闘司書が剣を構える。
「そうですぜ」
槍を構えケラケラと笑う青い色で装備を統一した戦闘司書。
なぜだろう、こいつら唯のチンピラにしか見えないんだが。
「悪いが我々が生き証人だ」
アハトは此方を睨む。
「それで目的は何なんでしょうか? 場合によっては我がお兄さん達を排除しますが」
「そうだっ!」
泣き止んだナルちゃんの言葉に合わせるクトウグァ。
「きゃははっはっははははっはっ! 魔力を殆ど奪われたお前達がかっ!」
「おいおいマジかよこのお子様ふひひひっ!」
ナルちゃんとクトウグァの言葉にズィーベンとツェーンはあざ笑う。
「だったらああああっ、やってみなあああああああっ!」
アハト達の言葉に合わせて僕の別人格達は殺意を込めてそれぞれ、武器を構えあるいは魔術を起動させる。
「ぜいっ!」
魔人バロンは手を刀に見立て空を切り裂く。
LV6 体術 乱。
真空の刃が発生し敵対している僕の別人格の後衛を牽制する。
「させませんっ!」
ツアールがドライの構えた槍を避け電撃を纏った右拳で仮面の左目の部分を頭部ごと砕く。
「はあっ!」
ロイガーがツヴアィの剣を双飛短剣で絡めとり捻りを加えた肘打ちで仮面の右目の部分を頭部ごと粉砕する。
「せいやだなあっ!」
赤い色で装備を統一した戦闘司書が唐竹割、上から下へと縦一文字に仮面ごとフィーアの頭部を斬る。
「しゅっ! だぜっ」
青い色で装備を統一した戦闘司書が槍を水平に仮面ごとフュンフの頭部を切り裂く。
…こいつら容赦ねえなー。
そして僕はと言うと此方に棍棒を片手に突っ込んでくるゼクス相手に幻術を起動させる。
幻術。
今更言うまでも無いが攻撃、防御、支援、呪術、生活、召喚とは別に分類されるこの魔術はその応用性に対して習得するためのコストが驚く程低い。
その割りに習得する者は恐ろしく少ない。修得したとしてもLV1が精々である。
理由は簡単だ。LV5までは敵に与えるダメージが攻撃魔術でいうとLV1~2相当で魔術抵抗されると相手になんの効果も及ばない為だ。
しかも欠点として無生物や不死者にはなんのダメージも与えられない上、ダメージを与えても時間が経つか術者が解除すると無傷になるので使い方の難しい魔術として知られている。
但しこの制限もLV6以上からある程度無くなるが、制御の難易度が途端に跳ね上がる。
しかもレベルを上げたと言っても、練習も無しに行き成りLV6以上の幻術を使いこなせない。
まあ、なにが言いたいかと言うと…。
ゴスッ!
LV6の幻術を起動させようとして間に合わずゼクスの棍棒に頭を叩かれました。
「たああっ!」
ゴスッゴスッ! ドテッ。
僕は格闘スキルと体術スキルを駆使してゼクスを叩きのめそうとしたが、先にのされました。
「「「「「「「「「「「はい?」」」」」」」」」」」
僕以外の別人格の分身達とツアールとロイガー戦闘司書二人、それにナルちゃんとクトウグァが眼を点にする。
「いい棍棒捌きだ、ぐふっ…」
僕は殴られた頭部を押さえつつゼクス称えると、ふらついて膝をおった。
「「「「「「「「「「なにやってるのっ!」」」」」」」」」」
…そういや体術と格闘スキルって、使うの初めてだった。
お読みいただき有難うございました。
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