第十三話 双子神の混乱
色々ありまして遅れましたすみません。この後修正に入ります。
~ツアールとロイガーの視点~
肝心なその方法をバロン様から聞いた私達はというと。
「うあああああああ~」
私は赤面して恥ずかしさのあまり蹲っていました。
穴があったら入りたい。
そんな表現を書物で見ましたが、実際にそんな場面に直面すると、中々どうして足に力が入らず、地面の下に潜ってみたいと思わずにはいられませんでした。
『夢は現に』
「ふふふ~ん」
ロイガーは、ご機嫌でその場をクルクルと回ってます。
…下着見えますよ。
はしたないですね。
気持ちは解ります。内心私もそうですから。
恥ずかしいですけど。
「…」
戦闘司書二号はというと、砥石をアイテムボックスから取りだし、槍を無言で研いでます。
眼が据わってます。とりあえず怖いんですが。
『いいかっ! 他の奴らに連絡を回せ至急だ』
『『『『『『『『はっ!』』』』』』』』
戦闘司書一号は部下に指令を次々に送ってました。
眼が血走ってますね。
最早、状況はカオスです。
「いい加減に離して欲しいんだが」
バロン様はという、戦闘司書一号に四の字固めで足を決められていました。
なぜに?
「駄目ですなあ、あんな事を御嬢達に教えるなんて」
「教えてくれと言われたのだが」
「屁理屈ですな」
「おかしいよねっ! 善意で教えたんだけどおおおおおおおおおおおおおっ!」
魔人バロン様の語尾がおかしいのは足に力を入れてるからです。
確か先程は卍固めをしてたんですよね、どうやってあれから流れるように極めてるんでしょう。
あっ次はサソリ固め。流石ですね、技の戦闘司書一号の異名は伊達ではないですね。
というか傍目で見るとお爺ちゃんと孫がプロレスごっこをしているようにしか見えませんね。
魔人バロン様は地獄を見てますけど。
「ロープっ! ロープっ!」
「無いですな」
ビクビクっと痙攣を起こし手を伸ばす魔人バロン様。
…程ほどにね。
『現は夢に』
「おおぉっ! まて、なにか聞こえないか?」
魔人バロン様は、関節技をやせ我慢して聞いてきました。
流石ですね。創世の時代より生きていた最古の魔人というのは、嘘では無いようです。少し情けないですが。
「声ですかっ?」
確かに言われてみればそんな気が。
「まさかっ!」
『【胡蝶の夢】』
魔人バロンの叫び声と共に、世界は軋み悲鳴を上げる。
青空を覆わんばかりの巨大な青き月が顕現した。
「これは、あの時の…」
戒めを解いた戦闘司書一号は唖然とした。
その気持ちは痛いほど解ります。魔人ウィル様の初陣報告で聞いた光景そのものですから。
ですが、これは何? この異様な存在感のある月は。
戦闘司書二号とロイガーも同じ思いらしくあんぐりとしています。
「初めてか? LV10 の魔術は」
「「「はいっ?」」」
魔人バロン様の言葉に思わず私を含めた全員の言葉が重なる。
今なんと?
「伝承神話級だ。本当はこいつが出る前に処分したかったんだが、まあいい約束道り手伝ってもらうぞ」
ため息を付く魔人バロン。…足が産まれたばかりの小鹿のように震えているのは本人の名誉の為に見なかった事にしましょう。
「LV10 の魔術は最古のあなたにしか使えないはずでは?」
戦闘司書一号が私達の疑問を代わりに代弁した。
LV10は戦闘系の魔術でいえば威力は戦略級核兵器数発分です。
あくまでも例えですが。
ちなみに私達が習得したスキルのレベルは次の通りです。
戦闘司書 LV4~6
私達 LV6~7
魔人 LV6~9
なお元からスキルを持っていた者はそれを足したものが、このレベル内に入ります。
所持している全てのスキルがこの範囲に入るのではなく、あくまでも、もっとも高い人物(神も含めて)がです。
普通の魔人はLV9までです。
魔人でLV10なのはバロン様だけだったんですが…。
「少し言い方に語弊があったな、正確に言えば奴のは様々なスキルを組みあせた物がLV10に匹敵するという事だ」
その言葉に鳥肌が立つ。
「幻術をベースにしているから安心しろ死にはしない、気をしっかり持てばな」
「安心できませんっ!」
とはいえ他に手段が無いのが事実。あきらめましよう。
「まあいい、それより覗いてみろ」
魔人バロン様に言われるままに【レンのガラス】を凝視してました。
「ちっ…やはり遅かったか」
最初の自分の落とした爆弾をスルーしてます。
まあその内容は、後日ウィル様の家で分かるでしょう。
「どうしたんですか?」
「魔人ウィルのご登場だ」
【レンのガラス】を覗き込む私達。
そこには、身代わりの死体の横に佇む、魔人ウィル。
「ふっ…ふふっ」
「なんだ?」
魔人バロンは魔人ウィルの様子に眉をひそめる。
「ふふはあああああははははっあああああああああああああっ!」
狂気。殺意。狂喜。悪意。狂乱。その仮面から漏れ出す感情を受けて、私の全身から血の気が引くのを感じました。
だが、ここにいる全員が彼を止めなければと思いました。
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