第三話 決闘!
俺と涼風は街外れまで来た。辺りは真っ暗だが、かろうじてお互いの顔が見えるのはあっちの世界より大きく見える月が放つ月明かりのおかげだろう。
「ここら辺でいい?」
この辺は過去の戦争で廃墟となりそのままになっているエリアだ。特にここ周辺は他の廃墟エリアより破壊され尽くされており、人は住んでいない。ここ周辺は治安が悪いということもその理由の一つだろう。
「ああ、で?ルールは?」
「そうね、ここは無難にどちらかが降参するか戦闘不能になったら終了ということでいい?」
「分かった」
承認したが、そのルール少し俺に不利だ。俺の武器は剣だが奴は銃。普通の殺し合いでも勝つのは厳しい。だというのに今回は峰打ちでの攻撃しか出来ない。それに対して涼風にはランドスに使ったゴム弾がある。涼風は撃ち放題だが俺は殺さないように戦わなくてはいけない。
涼風はそれをわかってるのだろうか。
「じゃあこのコインが地面についた瞬間に勝負開始。もちろん、容赦はしないから!」
そう言って涼風はこちらの世界の銅貨を手慣れたようにコイントスした。
銅貨が弧を描き落下してくる。
俺は身構えた。作戦は練ってある。
涼風は特に身構える様子はない。
一体どこに銃を隠しているのか知らないが。
銃を構える前にケリをつける。
銅貨が地面に落ちた。
勝負開始だ!俺は左腰に差してある剣を走りながら抜刀しつつ涼風に斬りかかる。俺の剣は刀に近い剣だ。
この剣なら峰打ちが出来る。
この戦闘、俺の作戦はこうだ。
開始と同時に一気に距離を詰める。出来る限り素早く。涼風が銃を構える前に腹に峰打ちを食らわせて勝負をつける。
完璧だ。
作戦通り俺は開始直後に涼風に接近した。
勝てる!
涼風はまだ銃を握っていない。ただこちらに手を向けているだけだ。
ん?なにかおかしい。俺の想定では涼風は腰か脇下辺りに隠している銃をホルスターから抜き、構えようとする。それより早く俺が一発食らわせるはずだったのに奴は銃を出そうとしない。それどころか既にもう銃を握っているかの様に構えている。
「神のみぞ知る異端の神装…発現せよ」
早口で涼風がそう唱えると、なにも無かった手にはデザートイーグルが握られていた。
それを勝利を確信したような笑みを浮かべながら、こちらに標準を合わせている。
「悪いけど、この勝負貰ったわ!」
涼風と俺の距離はまだ2メートル半ほどある。
これでは俺の剣は届かない。
銃口が俺に向けられている。
慌ててバックステップを刻む。
しかし、この距離じゃ避けられない。
間髪入れず涼風は引き金を引き、デザートイーグルからゴム弾がまっすぐ俺に飛んでくる。
こうなったらやるしかない!
普通ならアニメや漫画でしか出来ないあの技。そう…
銃弾を斬る!
やり方は簡単。飛んでくる弾をよく見てはいられないから、大体この辺かな?って所に剣を持ってくる。
ここで注意事項。弾に刃を当てると間違いなく刃こぼれするのでしないこと。
野球のバントと同じ容量だ。ただちょっと球が小さくなって速さが音速ぐらいになっただけ。
斬ってないじゃん?というツッコミはしちゃダメだよ?
もちろん練習とかはしたことない。ぶっつけ本番だ。
「カン‼︎」
成功だ。追加で飛んでくる弾も二発、三発と弾く。涼風も俺の剣技に驚きを隠せないようだ。
「ふっ…フハハハハハ‼︎見える!見えるぞ!俺にも弾が見える!」
「くっ!」
次いで来た四発目の弾も俺には余裕に思えた。
「ガン‼︎」
なんかさっきまでとは少し違う音がしたとおもったら俺の右ひじに激痛が走った。
弾いた弾丸がそのままひじに当たったようだ。
「痛っ!」
やべー。完全に調子に乗った。右腕めっちゃ痛い。
どうする?一旦距離を置くか?いや、ダメだ。
一度離れるとまた距離を詰めるのはキツイ。このまま行くしかない。
剣によるガードにも限界がある。
奴に隙が出来るとしたらリロードの瞬間。
そのうち必ず弾切れはくる。それまで持たせるんだ。勝機は必ずある。
俺は空いていた左手で左肩の後ろに差してある剣を引き抜く。
そこから斜め方向に前転し飛んでくる弾を回避する。
その後も出来る限り弾は避け、直撃する弾丸だけ剣でガードする。
8発を撃った所で涼風がリロードを始めた。
俺はすぐさま涼風に斬りかかった。
しかし、涼風はリロードをするのかと思いきや、そのまま俺に銃口を向けて引き金を引いた。右手に握っていた剣が衝撃とともに音を立て吹っ飛んだ。
何が起きた?
いや、考えるのは後だ。奴の銃はリロードが必要ない。それだけの事だ。
とにかくこのまま勝負を決める。
やれるはずだ!
俺は崩れた姿勢を逆に利用し、回転斬りで銃を切断する。
そのまま驚いた様子の涼風の顔前に剣を突き立てた。
「降参。あなた強いのね…」
俺は涼風との決闘に勝った。
不定期ですみません。書け次第、投稿してますのでご容赦ください。