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目指せ!異世界平和‼︎  作者: せきぽん
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第十三話 偵察と行商人

翌日。


かなり過酷な山登りとかしたので筋肉痛とか心配していたのだが、特に身体に異常はなかった。

むしろ一晩寝て体が軽くなった気もする。


聞いてみたところ涼風もらしい。

どういうことなのか。


「みゆき姉。かず兄。2人って逃亡中なんだよね?それってあの変な集団から?」


「そうよ」


「なにか悪いことしたの?」


「大したことじゃないわ」


「そっか」


あまりことの全てを教えると、この娘にも奴らの矛先が向くかもしれない。


「ティナ。あの人達が張っている場所と数、わからないか?」


「それなら知ってるよ!

数は2つ。場所は山道の入り口と、もう少し進んだ先にある山村の近くだよ」


「この先に村があるのか。少し気になるな」


今後のために買っておきたい物もある。


「え?村に寄るの?」


不安そうなティナ。村になにかあるのか?


「でも寄ることは難しそうね」


「そうだな。まあ、もとより寄るつもりはなかったから別にいいだろ」


「そっか〜」


安心したのか。

ティナが1人で野生児( )をやっているのには他の理由がありそうだ。


「とりあえず。検問は迂回したいのだけど、奴らの様子も少し知りたいのよね…

ティナ、どこか村と検問の様子が見える見晴らしのいい高台とかないかしら?」


「あるにはあるけど…ちょっと遠すぎて人は豆粒ぐらいにしか見えないよ?」


「かまわないわ」


「どうするつもりだ?」


「近代兵器をなめないで」


そうだった。この人スナイパーでした。





その後、ティナに食料の捕り方とか、生活の知恵など、色々教わりながら目標のポイントに向けて歩いていった。

ティナ曰く、件のポイントには半日ぐらいで着くらしい。

彼女のおかげで比較的落ち着いた道を行くことができた。ティナ様まじで感謝。


涼風はティナとずいぶんと仲良くなっていた。

やはり女の子同士の方が話しが合ったりするのだろう。




「ここが言ってた場所だよ」


俺の腹時計が午後2時くらいを告げるころ。目標の地点に着いた。


確かに見晴らしがいい。

村と検問所は小さい山を挟んでいるが、ここからならどちらも見渡せる。


涼風がデネルを構える。

おなじみ涼風愛用のスナイパーライフル。

デネルNTW20だが、今回はスコープで覗くだけだ。


「村の様子は普通ね。数名の騎士が村にもいる。物資は村に頼ってるのね。検問所の方はいまいち緊張感がない」


やはり俺たちがこのケルミス山脈方面に逃げたという情報は掴まれていないようだ。


「待って」


「どうした?」


「犬がいるわ。数は……7…いや8匹はいる」


「わかった。だが、犬はこちらの大体の動きを掴んでいない限り問題にはならないだろう?」


「そうね、行きましょうか。欲しい情報はある程度掴んだし」


今回の偵察でカリハンはこちらの位置を掴んでいないこと。敵に犬がいること。また、奴らが食料などの物資を村に依存していることもわかった。

十分な成果だ。


「そういえば、そろそろ村に行商人の商団が来るはずだよ?」


「行商人?」


「うん!二ヶ月に一回くらいで行商人が来るんだ。あたしもよく世話になってる」


「ティナって野生児なんじゃなかったのか?」


「いや、それはそうなんだけど、どうしても生活に必要な物はあるから…」


「まあ、そんなもんか」


完全に自給自足なんてこんな少女にはいくらなんでも厳し過ぎるだろうしな。


「ここを少し離れたら山道沿いに歩いていってみましょう。山道を歩く訳にはいかないけど、近くを歩けば商団を見つけることくらいは出来るかもしれない」


「そうだな」


買いたい物もある。街や村に寄ることは少し厳しい。しかし、行商人になら問題はないだろう。

少し金を握らせれば口止めも出来るだろうし。


「ティナ。申し訳ないのだけど、行商人と会えるまで一緒に来てもらえないかしら?商人と知り合いのあなたがいた方が色々話しが通しやすくなるの」


「いいよ!2人といると楽しいし!」


「そう言ってくれると助かるよ」


本当はあまり巻き込みたくないのだが、仕方がない。もし、騎士団に見つかった時は俺が囮になって最優先で彼女を逃がそう。

その時は涼風も連れていってもらう。奴らの目的は俺なんだし、土地勘があるティナがいれば上手く逃げられるかもしれない。




その翌日。山道沿いに歩いていると、行商人の商団を発見した。


「ティナちゃんじゃないか。今日は珍しいな。

お友達ができたんだね。よかったよかった」


「うん!」


商団のリーダーのおじさんはいい人だった。

ティナとも仲がいいようだ。

彼女を娘のように可愛がっていた。


彼は家族で旅をしつつ商売をしているらしい。

家族で始めた行商だったがいつの間にか仲間が増え、今ではそこそこ有名な商会に所属している商団らしい。俺も知っている商会だった。


商会というのは、商売ルートを団結して確保したり。あまり大きな発言力や力を持たない商人達が、団結することによって各々の身を守るためのこの世界独特の組織だ。

商人ギルドとも呼ばれたりするが本人たちはそう呼ばれるのを嫌っているので皆、商会と呼んでいる。


商人が災害に巻き込まれた時や盗みにあった時に支援をしてくれたりもする。


俺も前は武器商人をやっていたので商会にはお世話になっている。


「はじめまして、僕は見ての通り行商人をやっているカニマというものです。この商団のリーダーでもあります。よろしく」


こっちも各々に自己紹介をする。


にしても、いかにも商人という感じの人だ。歳はだいたい30くらいかと思う。

彼も結構な修羅場を乗り越えてきたのだろう。

うっすらとだが風格がある。


「いきなりで申し訳ないのだが、少し話したいことがある。馬車の中で少し時間をもらってもいいかな?」


さっきまでの営業スマイルから一転。

シリアスな雰囲気が胸を騒がせた。


「ああ、どちらか1人でもかまわないよ?」


「それなら俺が話を聞きます。涼風は買い物の方を頼む」


買い物は彼女に頼んだ方が無難だろう。いざという時そちらの方が対処しやすいしな。


「わかった」


「それじゃあ、こっちだ」


俺とカニマさんは2人で馬車に乗り込んだ。


「さて、単刀直入に言おう。話したいことというのはティナちゃんのことだ」


「?」


ティナのこと?俺たちの事情などの話しかと思ったが違ったらしい。


「君たちがどのような経緯でティナちゃんと仲良くなったのかは知らないが、真意を知りたい。君達はどのような意図を持ってティナちゃんと関わっているのか」


「なんの話しだか理解しかねますが、俺たちはただ彼女にこのケルミス山脈を越えるための道案内のようなものを頼んでいるだけです」


「しかし君たち2人はその……(わけ)アリの一行なのだろう?そんな人達がティナちゃんに関わるというのはな…」


やはり俺たちが訳アリだということはバレていたか。しかし、気になるのはそこじゃない。


「どういうことです?ティナは普通の女の子ではないのですか?もしかして、ティナには特別な何かがあるということですか?」


「すまないが、それを教えるわけにはいかない。それは彼女との約束だ。商人は約束は守るものだ。わかるだろう?」


「彼女がそう約束したのなら構いません」


「ありがとう。僕から言えることは一つ。

君たちが何をやらかしたのかは知らないが、早く彼女から離れるべきだ。君もあの純粋無垢な美少女には幸福に暮らしていて欲しいだろ?」


「そうですね…」


ティナの(けが)れを知らないような純粋な笑顔が脳裏をよぎる。俺もあんな()をカリハンや青龍騎士団のような人間達に関わらせたくない。


「だが、一つだけ。ティナちゃんの友達になってくれてありがとう」


「え?」


「彼女があんなに心からの笑顔を見せてくれるのは初めてだよ。間違いなく君達のおかげだと思う。君たちを信用したのも彼女の表情が理由だ」


「そうだったんですか」


「ああ、本当ならもっと彼女といてあげて欲しい……しかし」


「………わかりました」


その後、俺たちは馬車を降りた。


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