スリッパに悋気を起こすともがら
拝啓、うさぎ様
何故にスリッパを猛然とペロペロしますか。
何故にともがらめの指はペロペロして下さらないのですか。
ともがら、齢三十も近くして、よもやスリッパに嫉妬を覚えることになろうとは思ってもみませんでした。
うさぎ様は、労奴兎基準法というものをご存じでしょうか。
第二章 労働契約 第三十三条にはこうあります。
『使用者は、労働者の働きに対し適切な対価を支払わなければならない。
例えば、トイレ掃除は三ペロ程度の報酬を適当とする。』
どう思われますか。三ペロ、いえ、ともがら贅沢は申しません、ニ…いえ一ペロはお支払い頂いてもよろしいのではないでしょうか。
人間、鞭だけでは疲弊してしまいます。最悪0.5……いえ0.3、舐めるかと思ったら引っ込んだ、フェイントだった、その程度で構いません。ともがらにもご褒美を与えてやって下さいませんか。
聞いていらっしゃいますかうさぎ様。
拝啓、うさぎ様
それはお食事ではありません。
そのガサガサして重いビニールの袋の中には確かに貴方様のぺれっとが入っております。
しかしそれはお食事ではありません。重しです。
うさぎ様とともがらめを隔てるサークルの、重しです。お食事ではありません。
ですから、執拗に中を覗こうとなさるのはおやめ下さい。そんな斜め80度の角度で物凄い背伸びしても無駄です。その中には何も入っておりません。本当です。三キログラムほどの米国製ぺれっとなど詰まっておりませぬ。
拝啓、うさぎ様
あなた様は、鳥ではありません。
あなた様のおみ足には、鳥や猿のように細く不安定な場所をしっかと掴みバランスを取る機能などありません。
なのに何故五ミリもない柵の上に跳び乗りますか。
いつもはたいそう臆病でいらっしゃるのに、何故そのような不安定な場所でぐらぐら揺られますか。
あっあっちょっとやめてください。柵を足場にぺれっと袋の上に着地したかと思ったら目眩ましに掛けておいた毛布を蹴り飛ばして袋をこじ開けようとするのはやめてください!強盗か!!
……拝啓、うさぎ様
ともがらの悲鳴も無視して食うぺれっとは美味いか。