第4話
その帰り道、愛心はずっと泣いていた。
俺は、そんな愛心にかける言葉もなくただ、隣にいたんだ。
「太陽・・・・ごめんね。」
愛心がそう言ってきたとき、俺はとんでもないことを
言ってしまった。
「愛心、お前は中居が今でも好きなんじゃろう?」
「太陽・・・・。
自分でもわかんない。」
「そっか。」
そんな短い会話だった。
「俺、愛心が好きじゃけん。
愛心がないてるとこ見たくないわ。」
俺は、自分でも驚くことを言ってしまった。
でも、愛心の答えはなかった。
この沈黙がとてつもなく長かった。。。
家に帰った僕は、中居のことを考えていた。
(あいつも、夢を持っていたんだ。
愛心はそんな中居がすきなんだよな。)
でも、僕には、どうすることもできない。
ただ、時間だけが流れていった。
次の日、僕は中居のところへ行った。
中居は、当然僕のことを覚えてはいない。
「てか、お前だれだよ。
この前も、愛心と一緒にいたけどよ。
あぁ、愛心の男か!」
「俺は、杉浦太陽。一年前、お前と
同じクラスだった。
愛心とは付き合っていないし、男でもない。」
「んで、なんの用なんだよ。」
「お前、恥ずかしくないのか?借金取りがいけないとは言わない。
ただ、なんの生きがいもなくそんなことして楽しいわけ?
シェフになりたい夢があんのに、捨ててまでする仕事かよ。
同じ男として、情けないわ。」
「はぁ?お前何いってんの?
てか、お前には関係ないじゃろうが!!!!
ええかげんにせにゃぁどうなるかわかっとんのか!!!?」
「お前は絶対後悔する。これから先、後悔しながら生きていくことになる。
なによりも、愛心を泣かせるな。
愛心は、お前が好きなんだよ。
だから、夢に向かってほしいって思ってんだよ。
俺が言うことじゃないってわかってんだけど、頼むから、愛心を
これ以上なかせるのはやめてくれ。」
「お前、愛心が好きなのか?」
「・・・・・・・・・・・・・。」
しばらく沈黙が流れた。
そして、口を開いたのは、中居だった。
「俺は、愛心が好きだった。
中学のとき、先輩と仲良くなった時も、愛心はこの前みたいに
説教してきたよ。
高校にはいるために、勉強しろとか、なんとか言って。
でも、俺は勉強をしなかった。
シェフにだって、なれるわけがないって思ってたんだよ。
実際、高校に行っても、センコーに束縛されて、したくもない勉強
してさぁ。
だから、やめたんだよ。
それで、先輩に誘われて、今の仕事に就いてんだ。
でも、借金取りなんて、やくざみたいなもんだよ。
金を払ってもらえなかったら、殴られて、また行かされる。
その繰り返しじゃ。
俺だって・・・・・・・・・・・。
やり直したいと思うけど、無理なんじゃわぁ。
バカで、なんにもできんけ、こういう道でしかやっていけんのんじゃい。
わかったらとっとと帰れや。」
初めて、中居の弱い所を見た感じがした。
俺は、胸が締め付けられて、変な気分になった。
そして、
「やり直したい気持ちが強ければ、強いほど
人は、必ずやり直せる。」
それだけ言って俺は部屋をでた。