第9話 契約者と大魔王フィアレス
ここは悪魔の世界アザード。そして、ある日とある噂が流れていた。
「おい、最近ある契約者が暴れまわっているのを知っているか?」
「契約者って何だっけ?」
「そこからかよ、おい。契約者っていうのはだな、悪魔又は神と契約をし、力を手に入れんとする人間どものことよ」
「で、その契約者が暴れまわっているから何だって言うんだよ?」
「そいつはな、力がでかすぎて契約した悪魔も殺して暴走してんだとよ。全く、怖くてたまんないぜ」
「俺よりつええのかな? そいつ」
「当たり前だろ。俺も聞いた話だけど、強い魔将がたくさんやられてるってよ。もちろんたった一人で殺しまくってるって話だ」
こういう噂話を最近よく聞く。マシューはこいつとやり合ってみたいなどとよく言ってくる。それも全然冗談に聞こえない。本当に困った悪魔の彼氏だ。
私の名はシオーネ。マシューの恋人であり、そして私はマシューの血を受け継いで氷の力を持った悪魔。
個人的には、まだ慣れていないがその力はルシファーやロドスたちよりも上だと思う。
マシューは最近かなり強くなり始めている。炎と氷の両方を使い分けているから相手の能力に対して弱点をつきやすいというのがマシューの強みだ。
ひょっとするとマシューならこの噂の契約者に勝てるかもしれない。でも、このとき私はもう一つ恐ろしい存在があることを知らなかった。
そして、契約者の居場所をつかんだ。もちろんマシューは早速契約者のところへ行こうと言い出した。だが、それをルシファーが止めた。
「マシュー様、それはなりません。相手は噂によると十の大魔王に匹敵する強さを持っていると聞きます」
「何だよ、十の大魔王って?」
ここでロドスが説明した。
「十の大魔王は、大地、天、炎、水、氷、死、生、闇、光、雷というそれぞれの属性の頂点に立つ猛者のことだ」
「炎って俺のことか?」
「違う、炎の王はマシュー様の実の弟、フィアレス・ボルスだ」
「は? 冗談だろ」
「冗談なんかではない。真実だ」
「おいおい、そんな弟がいるなんて聞いてないぞ」
「まだ、話すには早いと思っていたんだ。まあ、炎の王と聞かれたら答えるつもりだった」
意外な真実。俺はただ呆然としていた。まさか、弟がいてしかもそれが十の大魔王の一人だったとは……。
「そいつは俺の仲間にならないのか?」
「あいつは今はギルドを形成しているからな」
「ギルド?」
シオーネが質問した。
ここではルシファーが答えた。
「まず、我々のように小さい団体を組という。そして、そのだいたい十倍ぐらいの大きさの団体をギルドと呼ぶ。ついでに言っておくと、さらにその五倍ぐらいの団体を闇のギルド、又は、暗黒の狩人とも言われている。まあ、これは実際大きすぎて一つか二つしかないがな。だが、それは意外と誰もが知っていると言うわけではない」
「へえ、そうなんだ」
俺はまだまだ知識が足りないなと感じた瞬間だった。
「まあ、とりあえずは会ってみようぜ。契約者に」
「マシュー、あんた何を聞いてたの。死ぬ気?」
「死なねえよ、シオーネ。俺はただそいつが仲間になるかなと思っただけだ」
「どれだけ図太いのよ。会ったら死ぬって言ってるの!!」
「そんなに怒らんでも……」
「私はマシューのことが心配なの」
シオーネが泣いていた。くそっ、俺は契約者と正直闘ってみたいがシオーネがこんなんだとどうもやりづらい。本当に困った。
「我々がついていけば大丈夫だろう」
「ルシファー、我々って?」
「もちろん私とロドスだ」
ナイス、ルシファー。思わずそう心の中で叫んでいた。
だが、それではおそらく一対一では闘えないだろう。
「ルシファー、心配は無用だ。俺とシオーネだけで十分だ」
「何を……」
「いいから、んじゃ、行ってくるぜ」
俺はアザードから契約者のいる俺たちがいた世界へと向かった。