第79話 悪魔との契約
「なあ……、本当にこの先どうするんだ?」
マシューはその場にいる全員に問う。
「ううむ、そうだな。まずは、奴らの拠点を把握しておこうか。それから策を練ろう」
そう提案したのはアック。
それに対して、ミラは答える。
「まあそれが一番かもしれないわね。その場合、どうやって奴らの拠点を把握するか……」
皆、ほぼ同時に頭を抱え込んだ。
だが、最悪な事に、その事は杞憂に終わる。
「お探しのものは見つかったかぁ?」
彼らの前に、堂々と敵が現れたからだ。
まるで、向こうに全てを知られているかのように。
そして、同時に恐ろしい事実を彼らは突き付けられる。
「ヴェイン……お前……」
「あんた……」
マシュー、アリスの二人は驚きのあまり、口をぽかんと開けていた。なぜなら、ヴェインの体は悪魔の体だったからだ。
赤い、鎧のような四肢。鋭利な爪。
以前、彼は確かに対悪魔用能力を使っていた。それを彼らは知らないが。
それならなぜ、彼の体は悪魔の体になっているのだろうか。
「俺がなぜ、悪魔なのか知りたいか?」
「…………」
誰も何も言わないが、ヴェインは続ける。
「俺は、マーク達と契約を交わしたんだよ。俺を悪魔にしてもらう代わりに、俺はてめえらを殺す、ってな。まあ、俺には得しかしねえから、別にいいんだけどな」
「お前……何で悪魔なんかに……」
マシューは愕然としつつ、そう言った。
「何で……? そりゃあ、てめえを超えるためだろうがよ!」
本来ならここで違和感を覚えてもいいのかもしれないが、彼らはそんなことを考える余裕などもっていなかった。
てめえらではなく、マシュー一人を指したことに。
間違いなく、ヴェインは知っているのだろう。
マシューは悪魔だということを。
おそらく、彼の仲間達も。
「さて……と。怪我人相手じゃ、流石につまらねえかもしれねえが、楽なことには変わりねえ。とっととあの世へ行ってもらうぜ。クソ野郎共!!」
マシューは強く思った。
おそらく、この記憶の件のせいで巻き込んでしまった彼らを、ただ護りたいと。