第78話 悪魔とエクソシスト
「やっとね……」
そう呟いたのは、シオーネという少女だった。
彼女は今、マシューは知らないが彼のいる町にいたのだった。
「これからどうしようか……」
シオーネは悪魔であるが故に、周囲に多くの悪魔を引き連れていた。
一時的にリーダーのマシューの代わりとして。
そして、リーダーである彼は現在、エクソシストと組んでいる。その事を、シオーネは知らないのだが。
シオーネの問いには、周囲にいる悪魔のうちの一人が答えた。
「とりあえずはマシューの情報集めからだろう」
この者の名は、ルシファー。偉大なる、十の大魔王の一人、天空を司る王だ。
「まあ、確かに情報なしでは動こうにも動けないからね……」
「何人か選んで集めさせようか?」
「お願いするわ」
この場にもし、マシューがいたなら違和感を覚えたかもしれなかった。
何にかというと、雰囲気が明らかに違っているのだ。うまく説明できないような、微妙ではあっても明らかに違う雰囲気。
そして、その頃マシューはというと……。
「ふあぁ…………」
大きな欠伸を一つ。
彼がいるのは病院だった。理由は怪我を癒すため。
本来なら、軽く手当てをして後は何もしないつもりだったが、マシューはいろいろあって学校へ通っているのだ。軽い手当てだけでは傷が目立ちすぎて、流石に困るというわけだった。
そのため、再び病院で手当てを受け、傷を癒しているのだった。もちろん、学校へは行かずに休んで、だ。
他の者もそれは一緒だった。
アリスやレーラも例外ではない。
彼女らもまた、怪我が目立つのは嫌だったらしく、病院へ来たのだった。
偶然にも、同じ病院、同じ病室だったが。
「だらしない欠伸ね……」
「別に欠伸くらい、いいだろ」
「まあまあ、喧嘩は止めとけ」
そう言ったのは、アック。
「……この先、どうなるのかな……」
マシューは不安だった。
記憶喪失のせいもあるのだろう。だが、マークはただの弱い悪魔ではない。それ故、恐怖もあるのだろう。
さらに、シオンの事もあるのだから、尚更だ。
泣き面に蜂。
彼はそういう状況に立たされているのだ。
おそらく、シオンと闘ったアリスやレーラの方が恐怖心は上だろうが。
だが、恐れてばかりもいられない。
記憶を取り戻すためには、闘って勝たなければならないのだ。
別に無理をしてシオンに勝つわけではない。マーク達に勝つことができれば、取り戻すことはできるだろう。
マシューは知っている。
マーク達が、自分の記憶の石を使って何かを企んでいる事を――。