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悪魔と神の子  作者: Leone
第三章 記憶編
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第73話 罠

「何が噂に聞く力だぁ? 図に乗ってんじゃねえよ、クソったれが!!」

 シオンは黒い雷を纏い、右拳を突き出す。

 常識も非常識をも超えた破壊力を誇る、その拳を。

 その拳とアックの槍が交わった時、爆風が周囲を襲った。アリスやレーラは、かろうじて飛ばされていない、といった様子だった。

 だが、シオンは気にせず次の攻撃をしかける。

 それは大気による攻撃だった。

 周囲の大気を操り、剣のようなものを形成する。シオンは無数のそれを、アックに向けて攻撃する。

 当然かもしれないが、アックは槍一本のため、防ぐことは不可能だった。それ故、彼は回避行動に移る。

 だが、シオンの攻撃はそれを許さなかった。

 大気に斬り裂かれ、膝をつくアック。

「てめえ、俺がいつ本気出してねえなんて言った? 罠なんだよ! てめえの闘いたいという意欲を掻き立てるためのな!」

 どうやら、彼の初撃は本気ではなかったようだ。だから、アックはそれを受け止めれたらしい。

「く……そ……」

 死。

 彼の頭に急に浮かんできたその単語。それと同時に彼は理解した。自分はこの怪物には勝てない。圧倒的な差が、壁がある。そして、彼女らを助けられないと知る。

 ただ、最後の内容だけは信じたくなかった。偶然、遭遇した彼女らだけは助けたかった。

 彼らエクソシストも……。

「……このままじゃあ、終わりだな……」

「……何を言ってやがる?」

 シオンはその言葉が少し気になった。アックの様子が不自然だったため。

「…………」

 思わず無言になってしまう。

 そして、アックは立ち上がった。

「やっぱ、お前には勝てないらしいな。それじゃ、逃げるとするか」

「何?」

「逃げるのは得意だぞ。俺は」

「逃げられるわけねえだろうが!」

「ふっ……。何を言っているんだ? お前は。既に俺は逃げきっているというのに」

「――!!」

 シオンは重大な事実を目の当たりにする。

 それは瞬きをした瞬間、アック、アリス、レーラの三人がいなくなっていたのだ。

「なっ……!!」

 そして、地面にはこんなことが水で書かれていた。

 罠にかかったのはお前だ。今までのことは全て、水で作り上げた幻。いずれ、またどこかで遭うだろう。その時まで、じゃあな。契約者。

「クソったれが……!!」

 彼は怒りのあまり、破壊衝動に駆られそうになった。

「絶対、ぶち殺す!!!!」

 そして、最後に妙なことを呟いた。

「それでも、あいつらには邪魔はさせねえ……」

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