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悪魔と神の子  作者: Leone
第三章 記憶編
72/79

第72話 アック

(何だ? こいつの自信は……)

 シオンは彼を見てすぐに、そう思った。

 かつて、マシューを試した水使いの男。そしてなぜ、その男がこんな場所にいるのか。一体、何の目的があるのか。

 それは……、

「まあ、お前に構っている暇はないのだが……」

「どういう意味だ?」

「そのままの意味さ。そこの者たちと、残り二名の負傷者を回収しなくちゃならんのでね」

 仲間の救出。

 ただそれだけだった。

 ただし、シオンにとっては別の意味も含まれていた。

「それは、俺の獲物を奪う、ってことなんだよな?」

「そうとも言う」

「……ちっ。めんどくせえなあ、てめえ。つまり、俺と闘いてえんだろ?」

「……どう解釈してもらっても構わん」

 挑発に挑発。

 当然、シオンは我慢などできなかった。

「くっ……ははははははははははははははは!! 最高だぁ! 笑いが止まんねえよ! なぁ!!」

 直後、彼はもうそこにはいなかった。

 既に回り込んでいたのだ。その男の後ろに。

 だが、

「遅い」

「何!?」

 シオンの蹴りはあっさり止められる。その男の持つ槍によって。

「そう言えば、まだ名乗ってなかったな。あの少年にも」

「…………」

 シオンは無言だが、その男は気にしない様子で名乗った。

「俺の名は、アック。この槍の名は、アクラス。そして、」

 より強調して、アックは言った。

「エクソシストの中で優れた能力を有する者が集まる、特攻部隊副隊長、アックだ」

 一瞬だけ、シオンは硬直していた。が、それもすぐに元に戻る。

 それは、強者と出会えた喜びからだろうか。

「へえ……。副隊長か……。ってことは、中々に強いってことだよなぁ。こりゃあ、おもしれえことになりそうだ」

 ひとまず、距離をとる両者。

 そして、今ここに新たな闘いが幕を上げた。

「とりあえず、てめえみてえな強者は全員俺の敵だ!!」

 そして、アックも、

「噂に聞くその力、この俺に見せてみろ!!」

 本来の目的は棚に上げて、シオンとの闘いを始めることにしたのだった。

 こうして、水のエクソシストと物体を操作する悪魔との闘いが、今始まる――。

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