第70話 怪物の本領発揮
シオンがついに本気を出す。その姿はまるで悪魔のようだった。契約者だと聞いてはいたが……。
「どう料理してやろうか?」
「そうね……。それじゃあ、料理をしない料理ってことでどう?」
「てめえ……。自分の立場わかって言ってんのか? 料理しない料理なんて、この俺が許すと思ったら大間違いだ」
「じゃあ」
「くそったれが!! 最初っからてめえの意見を聞きたくて言ったんじゃねえ!! それとも、てめえよりも先にあいつをぶち殺してやろうか?」
シオンがレーラの方を指さす。
「あんた……、最低ね」
「ああ、わかってる。だけどよ、別に最低でも構わねえ。裏切りやがったあいつさえ痛めつけられればな!!」
シオンが怒りのパワーで地面を蹴る。同時に、その場のアスファルトに亀裂が走る。
そして、アリスのところへシオンが突っ込んでくる。
黒き雷を纏った拳。
それは巨大な破壊力を誇っていた。
何とか回避しても、雷が少しでも当たれば皮膚が深く斬り裂かれる。
「くっ……」
「ひゃはっ!! まだまだあぁ!!」
次は横腹に向かって蹴りを入れようとする。アリスはそれを雷の剣で防ごうとするが、
「そんなもん、粉々に砕いてやらぁ!!」
剣を無理矢理蹴りで壊し、さらに横腹に直撃してアリスが吹き飛ぶ。
音速で。
それは本当に一瞬で、飛ばされた方にあった建物は跡形もなく粉砕される。
「軽いんだよ、クズが!! もっと踏ん張ってみせろ!!」
「…………」
だが、返事はない。
「ちっ、死んだか。もうちっと楽しもうと思ってたのによ」
そのとき。誰もが予想できる行動をとった者がいた。
レーラだ。
ボロボロになりながらも、アリスを助けようと必死になる。もう、間に合わないかもしれないが。
だが、レベル6が敵わないのは一目瞭然だった。レベル7がこうなのだから。
背後から襲いかかるレーラを、シオンは片腕を少し振り回しただけだった。それだけで、レーラは瀕死状態になる。
「…………」
「クズが。てめえらみたいな低レベル能力者がいくら俺に刃向かおうと無駄なんだよ」
「じゃあ、俺ならいいのかな?」
不意に背後から声が聞こえた。
振り向くとそこには、青い髪に青い瞳をした、槍を持つ男がいた。
そう。マシューを試した男だった。
「ふっ……」
その男はシオンを前にしても、笑っていた。