第7話 悪魔の恋
魔将との闘いから一ヶ月が経った。
俺は学校に少しの間だけ再び通っていた。教室に入ると、一つ席が空いていた。俺の隣だ。
ちょっと休んでいたから周りからはいろいろと心配されていた。
三時間目の歴史の授業。俺は悪魔の力のおかげで耳がすごくいい。だから、隣の授業も聞こえてくる。もちろん、集中なんてできやしない。この授業は何となく聞いていたが、始まって十分後、女の悲鳴が聞こえた。
俺はなぜかそいつを助けたいと思っていた。だが、授業中だ。急に立ってなんて言い訳しよう。
俺はとりあえずそんなことは頭から振り払って、駆けだしていた。
「おい、どこいくんだ?」
俺は走りながらいい考えを思いついた。
「トイレっす」
「たく……。まあ、いいか。授業再開するぞ」
俺はスピードに気を付けつつ、早くそいつのところへ行った。
その女は四人の男の不良どもに金を取られそうになっていた。紫の短めの髪、青の瞳、少し白い肌、そして結構美人であった。恋に堕ちることはなかったが……。
「おい、おめえら。そいつに何してんだ!?」
「何って? 見りゃわかるだろ、バーカ」
くそっ、どうすればいいんだ。俺はそう思った。ここでは簡単に力を使ってはいけないから、非常に困った。見て見ぬふりするわけにはいかないし……。
その女は俺を悲しそうな目で見た。俺はこいつには何かあると、根拠はないがそう思った。
「今度返すからさあ、三千円くらいやすいだろ? 俺ら飯持ってないんだよ。たのむから、な」
「さっさと失せろ。カスどもが」
俺は素手で挑もうとした。
「はあ? 何言ってんだこいつは。ま、そう言うんならてめえから金を取ってやらあ!!」
四対一。普通の人間ならまず勝てないだろう。だが、俺は悪魔の力を解放せずとも、少しは闘えた。
まず一人目は、右パンチで倒した。二人目は、相手の蹴りをかわし、こっちの蹴りで倒した。三人目と四人目は同時に来たから、片方のパンチをくらってしまった。だが、それに怯まず二人とも蹴りで倒した。
「やべえ、こいつ格闘家かよ。逃げるぞ」
そう言い残し、不良どもは金を置いて去った。
「ほらよ、お前の金だ」
「……ありがと」
「じゃあな、俺、授業に戻んねえと」
「あの……、君の名前は?」
「……マシュー」
「え!? 君あたしの隣の人?」
「隣?」
「ええ、あたしは一年二組のシオーネよ。聞き覚えあるでしょ?」
「俺、しばらく休んでたから……」
「……何で?」
「それは……言えない」
「ふうん。でも、あんたマシュー・ボルスでしょ。そうなら間違いないと思うよ」
「確かに俺はマシュー・ボルスだけど……。何であんたは授業に出てないんだ?」
「……あたしは……ただ単に勉強ができないから、サボってるだけ。そこで、たまたまあいつらが来て、あんたが助けてくれたってこと」
「そうか……」
「それでさ……、あんた、あたしと付き合ってくれないか?」
「は!?」
「あたしさ、あんたのそのやさしさと強さに惚れたんだ。だから、あたしと付き合ってくれないか?」
「俺でいいのか?」
「ああ」
予想外の出来事に俺はかなり長い間硬直した感じがした。
「まあ、フリーだし。付き合ってやるか」
だが、その出来事は俺にとってうれしいようなちょっと迷惑なようなそんなことを感じた。
なぜなら、俺は悪魔だから……。