第64話 提案
マシューとミラはこの町にあるホテルに泊まることになった。
そのホテルは、外の町とはあまり変わらない普通のホテルだった。
とりあえず、食事をしながらマシューとミラの会議が開かれた。
「まったく……。どうするつもりか知らないけど、何であんなことになったの?」
「こっちが聞きたいよ。何か知らねえけど、急に喧嘩売ってくるんだよ」
アリスとのことだ。
マシューがレベル6のため、アリスは気に入らないらしかった。たったそれだけの理由で、これまでマシューに喧嘩を売っていたのだ。
「ま、お前のことだしな。何とかしてうまく治めないとな。そして、追加で悪魔のことも調査する必要がある」
「……わかってるよ。それに、記憶の石に繋がるかもしれないし……」
「まあな……。最初の記憶の石は、実際奴が持ってきたわけだし」
奴というのは、地の王こと、テラールのことだ。彼は、一つ目の記憶の石を渡し、さらにその情報まで提供した張本人。
つまり、悪魔である彼が関係しているということは、他の悪魔にも関係している可能性がある、ということだ。
ただし、その記憶の石自体の在処は全くわかっていないのだが。
「悩んでいても仕方がないのかもしれないな。なら、早速実行に移る方がいいのかもしれない」
「実行って?」
「悪魔探しさ」
「一体、悪魔をどうやって探すって言うんだ? 悪魔は人間に化けているんだろ? だったら、探すのは不可能じゃ……」
そう。悪魔は基本、その正体を隠すため人間に化けているのだ。
「確かにな。だが、それじゃあ一体どうやって奴らを倒すというのだ?」
「……」
マシューは答えられなかった。
「もし、人を殺す為に一時的に正体を明かしたとしよう。そして、その時に仕留める。だが、それではだれかを生贄にしなければならない。私としては、それは避けたい」
もっともだった。
そのやり方では、必ず死人が出る。それは、誰かの家族であったり、恋人であったりするかもしれないのに。
そしてもちろん、マシューもそのやり方には、賛成できなかった。
「そこでだ」
ミラがある作戦を提案する。
「生贄を私にしたらどうだ?」
それはとても単純で、そして、非常に困った作戦だった。