第62話 電気の性質
一方で、アリスとレーラはちょこっとゲーセンなどに寄り道して帰っていた。
だが、帰る時はすでに午後九時になる寸前だった。
つまり、女の子二人で夜に出歩くということは、
「ねね、そこのお譲ちゃん達。俺たちと遊ばない?」
こういうことだ。
男四人組の集団がアリスたちに声をかけてくるということ。
だが、彼女たちは隠れた力を秘めている。
レベル7とレベル6という力を。
「あっそ」
故にこのような対応ができるのだ。普通の女の子なら、この時点で大変なことになっているだろう。
しかし、この二人の前では、それは通用しない。だが、ある意味大変なことにはなっていた。
それは。
「つれないなあ。じゃあ、力ずくで連れていくしかな」
途中で言葉が途切れた。理由は、もちろんアリスの攻撃。
「あんたたちは、ここで平伏せていればいいのよ! 出来損ないの不良どもが!」
全員、アリスの電撃により気絶させられた。
「……帰ろっか」
夜の道を帰る二人だった。
そのとき。
「何だあ? こんなもんかよ」
背後から聞こえる声。その背後には気絶させたはずの不良たちがいたはず……。
だが、それでも一人だけ立ち上がる者がいた。
「知ってるか? 電気の性質ってやつを」
電気を扱う能力者に対して放つその言葉を不思議に思うアリス。
自分の能力であるなら、性質ぐらいは知っているのが当たり前。
だが、
「電気にはな、勘違いしやすい性質ってのがあるんだ」
男は掌をこちらに向けながら言う。
「つまり、こういうことだ」
その瞬間、その男の掌から水の砲弾が発射される。
アリスは反射的に雷の剣を製造し、それを斬り裂くことにより、身を守る。
「水はな、電気を通しにくいってことだ」
確かに、水は電気をよく通すと勘違いされがちだが、実際は通しにくいものなのだ。
もちろん、アリスはそんなことぐらい当たり前のように知っている。
「ちっ。水の能力者だから感電を和らげたってことなのね。でも、最初に言っておく。たとえ水の能力者だろうと私には勝てない」
「それは楽しみだ」
いまさら言うまでもないが、周りにいた人たちはすでにここから離れている。
闘いに巻き込まれないように。
「アリス……」
「レーラ、手出しはいらないからね」
「随分と余裕だな。ま、その方がこちらとしては嬉しい限りだが。流石に二人相手はきついだろうからな」
「……一人だったら勝てるって言ってるようにしか聞こえないんだけど」
「そう言ったつもりだが?」
ブチッ、と脳の血管が切れるような気がした。
アリスはついに爆発したのだ。
「ぶち殺す!!」
アリスVS不良の闘いが幕を開けた。