第60話 謎に満ちた少年
ヴェインはこの日の帰り、建物の前に人が集まっているのを見かける。
「何だ?」
少し気になるヴェインは一人の男性に声をかけてみた。
「いったい、何が起きているのですか?」
「どうやら、銀行強盗らしい。人質もたくさんいるため、迂闊に手が出せないそうだ」
「……」
ヴェインは考える。
警察に話しかけてみる、などということではない。
ぶち壊してやろうか、と。
「ちょっと行ってくる」
「え? ちょっと、君!」
ヴェインは警察がいるところまで行く。
すると、案の定、
「ここからさきは危険だ。すぐに帰りなさい」
「はあ? うっせえよ、出来底ないの軍勢が! 俺に任せりゃ、簡単なんだよ」
「な、何て事を言うんだ! 君は」
「いいから、そこをどけ」
「とにかく、民間人は立ち入り禁止なんだ!」
無理にでも、押し戻そうとする警察。
そのとき、その警察から赤い液体が吹き出る。
「――っ!!」
「おとなしくしてりゃ、いいんだよ」
原因は言うまでもない。
「君! 何をしてるんだ!?」
別の警察が駆けつけてくるが、
「!!」
ふと、その少年の姿が消える。
そして、後ろに。
「いいから、黙って見てろ」
恐る恐る振り向く警察だが、振り向いたときには時すでに遅し。少年は建物の中に入ってしまった。
「くっ……。いいですか、皆さん。危険ですから、これ以上入らないように。我々はあの少年を助けるためにこれから中に」
入ります、というセリフは聞こえなかった。
なぜなら、すさまじい轟音が響いたからだ。
中では、既に戦争が始まっていたのだ。