第58話 サタンと化け物
右隣の誰かさんのせいで、授業の雰囲気が張り詰める。そんな時でも、授業を無理矢理進める先生。
そして、午後の最初の授業。
その授業は体育。
対悪魔用能力を持つ者の多い学校が故に、いやな予感しかしないのだが……。
そして、それは見事に的中した。
「新しくこの学校に入った者もいることだし、久しぶりに能力測定をするとしようか」
体育の女性の先生が声を張り上げる。
「一応測定方法を話しておく。まあ、簡単なことだが……。方法は、あそこにある的に攻撃するだけ。いいな? んで、結果はレベル1が最低でレベル10が最高な」
その的というのは、悪魔の姿をした人形だった。黒い髪を長くのばし、色白の肌、赤黒く長くて鋭い爪、黒い巨大な翼、真っ赤な眼球に猫のような黄色い瞳、といった見た目の人形だ。
「すげえ見た目……」
「だろ?」
先生が続けて話す。
「あれはな、伝説の魔神「サタン」をも遥かに凌駕する力を持つと言われる、本物の化け物らしい。実在するのかどうかは不明だけど」
「へえ……」
「ま、ただの人形だから思いっきり攻撃してみな」
そして、次々と人形をぼこぼこにしていく皆。しばらくして、やっとマシューの出番が来る。
マシューは常に持ち歩いている剣を隠すための細長い袋から剣を出す。
「よし」
マシューは剣を鞘から抜く。それと同時に紫の炎が剣から溢れだす。
「ほお、すごいな」
マシューはあのときの感覚を思い出しながら、剣に力を込め、紫の炎を放つ。
「うおおおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」
クラスの中でも一際目立つ声を張り上げる。そして、結果は……。
レベル6。
中の少し上あたりくらいか。マシューはこんなものなのかな? と思い、あまり気にはしなかったが、
「へえ~、中々やるじゃん。でも……」
マシューの次の奴。その者の名は……。
アリス。
アリスは雷を帯びた剣を能力を使って作りだす。そして、その剣を真横に振る。
その瞬間、青白い雷のかまいたちのような物が剣から放たれる。
ズドオォン、という轟音をたてて。
結果はレベル7。
マシューよりも1上だった。
「すげえな、アリス」
「あんたに名乗った覚えないんだけど」
「まま、そんなに喧嘩しないで。ねえ、アリス」
「あんたは黙っててよ、レーラ」
アリスの友達、レーラの結果をマシューはふと気になっていた。ひょっとして、こっちも強いのではないかと……。
そして、レーラの出番が回ってくる。
レーラの能力は大気を操るものらしかった。そう思ったわけは、レーラが掌を前に出し、空気砲のようなものを的に当てていたからだ。
気になっていた結果はというと、マシューと同じレベル6だった。
「やっぱり中々上がらないわね」
「私だってレベル7から上がってないよ」
「……それ、皮肉にしか聞こえんだろ」
「あんたは一々突っ込まない!!」
「ふう……」
「ごめんなさいねえ。うちのアリスがだめだめで……」
「レーラ! あんたは私の親か!」
怒っているようだが、その顔は少し苦笑しているようにも見えた。
そして、皆が能力測定を終えたとき、この体育の授業は終わりを告げる。