第54話 チーム
マシューは合格することができたので、組織の中へようやく入ることができた。
組織の中は意外なことに、一種の酒場のような雰囲気だった。
「それじゃあ、とりあえずはリーダーのところへ行こうか」
「は、はい」
マシューはどうしても緊張というものを忘れられないでいた。
建物の大きさに比例して、10階ぐらいある階段の全てを上がりきる。
そして、リーダーの元へ……。
「合格おめでとう」
その男のリーダーの人は出会った瞬間、座ったままそう言った。そのとき、その声を聞いて門の前でカメラを通して話していた人だとわかった。
「ありがとうございます」
礼を言うマシュー。
「一応名は名乗っておこう。エクソシストのリーダー、エックスだ」
「マシューです」
「では、早速で悪いがそこのミラと一緒にチームを組んで仕事をしてみないかね?」
「あの……チームとは?」
「これは失礼。チームというのは、難しい仕事などをこなすためのものだ。悪いことはほとんどないから、是非組むといい。ミラ、君は構わないだろう?」
「え? ええっと……」
「よ、宜しくお願いします」
「……しょうがないわね。わかったわ、組んであげる」
「ありがとうございます」
「それじゃあ早速……。ええと、この仕事を頼みたいのだが……」
エックスは机の上にあるたくさんの紙の中から一つ掴んで、それを見せる。内容はこうだ。
ある町の複数の学校内に、悪魔が潜んでいるらしい。それを叩くのが、この仕事の依頼。
一見、簡単そうではあるが、実際は違う。まず、複数の学校内というのが問題だ。複数ということは、二つかもしれないし、三つかもしれない。あるいは、十以上かもしれない。
なぜ、こんなに多いのかというと、実はこの町、以上に学校が多いのだ。そのわけは、対悪魔用能力を開発している町だからである。そして、開発には実験がつきもの。その実験の相手が学生なのだ。
学生の場合の長所は、学校同士で競わせることでたくさんのデータを簡単に手に入れられるからである。
そして短所は、大失敗のとき、実験相手に何が起こるかわからないというのがある。故に、この実験は相手の了承を得たうえで行う。まあ、そんな大失敗は一度もないが……。
だが、その失敗が気になるのか、世間にはあまり知らされていない。この町に来た学生のみに知らされているようだ。
そして、二つ目の問題。それは、悪魔は人間に化けている可能性が高いということ。
この町では、学生がいくら特殊な能力を使おうと不思議ではない。故に、少々派手に行動をすることもできるのだ。
たとえば、けんかで相手を倒すとき、勢いで相手に重傷を負わせることが可能なのだ。普通の町では無理だが……。
つまり、この町では全ての人間を敵とみなすことが重要なのだ。
だが、一つの疑問がわく。
「何でこんな不思議な町なのに、自分たちで対処しないのですか?」
マシューがエックスに問う。
「それはな、できないこともないが実験が忙しいんだとさ……。全く、ふざけた奴らだよ」
「そうなんですか……」
「で、この仕事、頼まれてくれるか?」
マシューとミラが顔を合わせる。そして……。
「わかりました」
同時に答えたのだった。