第53話 テスト
組織の建物の中へ入る……。そのとき、背後から声がした。
「おい、小僧」
青い髪に青い瞳をした、槍を持つ男。
「もし貴様が特別な力を持っているなら、今ここでそれを見せてみろ」
「……ええっと……」
「マシュー、剣を抜くのよ」
「あ、ああ。そういうことか……」
その男がこちらを睨むように見ているせいか、妙に緊張する。
そして、マシューはゆっくり剣を鞘から抜く。
その剣からは紫の炎が……。だが、前より少し炎の量が多いような……。
「それが、貴様の能力か。奇妙な炎だな、紫色とは……。だが、本当に役に立つのかは俺が決める。さあ、かかってこい。俺を殺す気でな」
「殺すって……」
「大丈夫。あいつは結構強いから、そう簡単には死なないよ。だから、全力でぶつかってみなさいな」
「……わかった」
マシューはその男に向かって走り出す。
「うおおおおおおおおお!!」
「何だ? もっと速く動けねえのか?」
男は槍を振り回す。まだ、マシューは攻撃範囲内に入っていないのにも関わらず……。
だが、突然マシューの頭上から水の塊が落ちてくる。
「ぐわっ……!!」
「どうだ? 痛いだろ? 俺の水の攻撃はよ」
「水……」
「そうだ。生命の源である水は、使い方次第で恐ろしい凶器と化す。今のは単に水を思いっきり叩きつけただけだが、それを高圧水流とかに変えたらどうなると思う?」
「!!」
「理解できたようだな。まあ、今回はテストだ。そんな手荒なまねはしない。何しろ、久しぶりの能力者だからな。さあ、次々!!」
何度も水が頭上から落ちてくる。いくつかは回避ができても、すべてを回避するのは不可能に等しいものだ。
よって、何度か水の塊をくらうマシューだったが、それでも少しずつ前進する。
「く……」
「ほれ、あと少しで届くぞ」
「ぐおおおおおおおおおおお!!」
剣の切っ先を男に向けて、走り出すマシュー。だが、ひらりと簡単にかわされてしまう。
「く……」
「おしいな……」
そのとき、本当に殺す気でマシューは剣の軌道を変え、男を斬りつけようとする。
だが、斬りつけることはできなかった。
しかし、その紫の炎を男に向かって放つことで、攻撃を当てることができた。
「……やるじゃねえか」
「ははっ……」
だが、ほとんど傷がなかった。おそらく、攻撃が当たっても水で炎のダメージを抑えたのだ。
「まあいい。とりあえず、合格だ」
「……」
一瞬遅れて、
「うおおおっしゃああああああああああああ!!」
喜びのあまり、叫んでいたマシューだった。