第52話 記憶の石 一
悪魔が去った後、ミラとこの石についてどうするかを相談していた。
「石を飲み込め、だなんて……。流石にそれは……」
「でも、本当だとしたらこれから先ずっと、記憶を取り戻せないことになる。一か八か、賭けてみるしかないのかな……」
「私は勧めない。でも、あなたがどうしてもというなら、止めないから……」
「……わかった。あいつの言葉、信じてやってみる」
少年は、青い石を口の中に入れ、飲み込む。
すると、少年の体が青く光ったのだ。そして、元に戻ると少年はこう言った。
「俺の名前はマシュー。……くそ、それ以外は何も思い出せない」
「でも、よかったじゃない。自分の名前を思い出せたみたいだし……。これから、その石を探していけばいいんじゃない?」
「……。でも、石がある場所が……」
「それなら、心配はいらないわ。あなたが、エクソシストになればね」
「え?」
「つまり、エクソシストになれば仲間が探すのを手伝ってくれると思うから……。たぶん、いやとは言わないと思う」
「エクソシスト……か……」
「そう焦らなくてもいいから。じっくり考えて、答えを聞かせてね」
「いや、俺、エクソシストになる。エクソシストになりたいんだ。そうすれば、この剣の扱いも知ることができるだろうし……」
「……わかったわ。じゃあ、これから組織のところへ行くから、ついてきて。とりあえず、仕事も終わったし、ね」
「有難うございます!!」
「ふふっ」
ミラは笑っていた。おそらくうれしかったのだろう。仲間が増えたことが……。そして……。
組織へたどり着く。
マシューは、一目見てこう思った。組織の建物が異常なほどに巨大である、と……。
「すげえ……」
「でしょ?」
ミラはその巨大な建物の門の前に立つ。
「心の準備はいい?」
「いつでもどうぞ」
だが、正直緊張していたマシュー。
「ミラです。ただ今戻りました」
すると、門の上の方にカメラがあることに気がつく。そして、そこから声がした。
「お帰り、ミラ。それで、そこの少年はどなたかな?」
「マシューという少年ですが、どうやら、特殊な力があるみたいでして……」
「ほう? 特殊な力か。久しいな、エクソシストになれる者を見るのは……」
「ですから、とりあえず中でそのことについて、話したいと……」
「わかった。今、開けてやる」
すると、門が開いた。
「さて、エクソシストになりましょうか……」
「はい!!」
開け放たれた門の中へ入るミラとマシュー。記憶なき悪魔の運命は、どうなってしまうのだろうか。