第49話 新たな始まり
私の名前はミラ。「エアリウス」という魔剣を扱える魔剣士だ。
今私は、人間の対悪魔用組織、「エクソシスト」の仕事でとある町に行こうとしているところだ。その町は、噂によれば呪われているらしい。たとえば、その町に入った人は二度と帰ってこないか……。
そういうよくありそうな呪われた町に行くのだ。
エクソシストは、そう言った場所へ行き、調査をする。そして、原因が悪魔なら躊躇なく排除する。もし、ただの噂話だった場合は組織へ戻る。そして、次の仕事へ……。
こういったことを、エクソシストは人間を守るために毎日行っている。
そもそも、エクソシストはどうやって生まれるのかというと、私の場合は魔剣を扱えたからである。大抵は、魔剣を扱うことなどできない。だが、まれにそういう人間がいるのだ。
他にもいろいろ特殊な能力があるが、それを一つでも持っている場合は、エクソシストに任命される。
能力のある人間を見つけるチームもエクソシストの中にある。最近は、随分と見つけることが少なくなっているのだが……。
そして、私はその呪われた町に行くのであった……。
ミラがその町に到着すると、天気は最悪なものだった。まさに呪われた町にふさわしい、大雨だったのだ。
「ひどい雨……」
ミラは傘をさし、町を探索する。
町の様子は、人の気配が全くしない、いわゆる廃墟となっていた。
その町の真ん中で、少年を見つける。真っ赤な髪に真っ赤な瞳の高校生ぐらいの少年を……。
その少年は、傘もささず、雨にうたれながらその場に佇んでいた。
「あの~……」
ミラはその少年に話しかけてみた。
少年はこちらを振り向く。そして、少年は言った。
「私のお知り合いさんですか?」
「え?」
「……実は、何も覚えてないんです。自分の名前すらも……」
その少年は記憶喪失だった。
「もし、私の名前をご存知でしたら教えていただけませんか?」
「……ごめんなさい。今、会ったばかりだから……」
「そうでしたか……」
「あの、」
「?」
少年は首をかしげる。
「この町についてもご存知でないんですよね?」
「ええ、まあ……」
「この町、呪われているっていう噂があるんです」
「呪われている? じゃあ、あなたもここから逃げないと……」
「私は仕事でここへ来ているので……」
「でも、私は記憶がないので誰かの近くにいたいんです。不安なので……。あの、一緒に行動するのは、だめ……ですか?」
「……」
ミラは戸惑いながら、こう答えた。
「いいでしょう。ですが、決して私から離れないように」
「ありがとうございます。あの……、お名前は?」
「ミラです。宜しくお願いします」
「こちらこそ」
ミラとその少年が握手をする。そのとき、ミラはあることに気がつく。少年が剣を持っていることに……。なぜ、今まで気がつかなかったのだろう? そう思った。
「その剣は?」
ミラは尋ねてみた。
「気がついたときに持っていたんです。記憶がないのでわかりませんが、たぶん私にとって大事な物かと……」
「そうですか」
「そういえば、あなたも剣を持っていますね」
「ええ。これは魔剣と呼ばれている剣でして……」
「魔剣?」
「そうです。悪魔の力が宿っている剣のことをそう言います」
「悪魔?」
「話せば長くなるのですが……。簡単に説明しますね。この町は、呪われた町と呼ばれていますが、実際はそうではない可能性があるのです。どういうことかというと、その悪魔が絡んでいることがあるからです。稀ではありますが……。それを確かめに来るのが、私の仕事なんです」
「もし、その悪魔が絡んでいるとしたら?」
「その場合は、この剣で悪魔を殺します。そうすれば、その町も元に戻り、妙な噂も消えるということです。逆に悪魔のせいでなく、単なる噂話ならそれで済みます」
「ということは……、この町は危ない可能性があるということなのですね?」
「はい。ですから、離れないようにと……」
「わかりました」
「いざとなったら、迷わずその剣を抜いてくださいね」
「はい。あ、ちなみに、私のことはベリウスと呼んでくれますか? さっきも言ったように、名前を覚えていませんが……」
なぜか、ベリウスという名前が頭に浮かんだ。過去に何かがあったのだろうか……。
「……わかりました、ベリウスさん」
こうして、ベリウスと呼ばれる少年とミラの調査が始まる。