第48話 ありがとう
ミーから何とか逃げきったマシューたち。だが、皮肉にもまたあの少女と出会う。助けてもらったのに……。
「ついてねえな。ベリウス、みんなを頼む」
「何?」
「俺一人で闘う。大丈夫だ。ロットに勝てたんだ。今回だって勝てるさ」
「お前……」
「全滅しちゃ意味がねえだろ? 早く逃げろ」
「……お前のことは一生忘れねえ」
「ふっ、もう死んでるけどな」
「そうだったな……」
お互い最後には笑っていた。そして、ベリウスはこの場を去る。
「さてと、そろそろこの世界ともおさらばしなきゃな」
「……」
「ずいぶんと無口なのと当たったみてえだな……」
マシューVS少女の闘いが幕を開ける。
当然、マシューは最初から全力を出すために悪魔の姿になる。
少女は小さめの剣を鞘から抜く。
そして、鎌と剣が交えたとき、ガキンという音が虚空に響く。
「おおおおおおおおおおおおおおおお!!」
マシューは奥義を放つ。
少女はあのとき受け止めれなかったのだから、止めることなどありえない。少女はマシューの奥義に押され、たくさんの建物を破壊しながら吹っ飛ぶ。
「まだまだああ!!」
続いて、二発、三発と奥義を放つマシュー。そして……。
奥義によって巻き上げられた砂埃が晴れたとき、少女の姿が明らかになる。
血まみれだったのだ。
あれほど苦戦していたのに、こうも一方的に勝つことになるなんて……。
別に悪いことではないのだが、ちょっと自分の力を信じられないでいた。
そのとき、少女の口が開く。
「イキ……カエルコトヲ……ミトメ……マス……」
「!?」
「チカクニ……キテ……クダサイ」
少し警戒しつつ、マシューは少女のもとへ近づく。
「アナタハワタシニカッタノデ、モウイチドイキルケンゲンヲアタエ……マス。デスガ、イキカエッタトコロデモトノイバショヘハモドレナイカモシレナイノデ……」
元いたところへ帰れない? どういうことだ?
「キオクソウシツ……。イキカエルト、イママデノコトヲスベテワスレマス。デスガ、キオクハ、ウンガヨケレバトリモドセルノデ……。ソノバアイハ、モトノイバショヘモドレマス」
つまり、生き返ったところで意味があまりないことがあるということだ。
「キオクヲトリモドスホウホウハ、ジブンデミツケテクダサイ。ソレト、コノホウホウハイチドキリデス。ツギモアルトハオモワナイデクダサイ。ソレデハ、カミノゴカゴガアランコトヲ……」
マシューの体が光りだす。
そして、死の世界から追い出されようとしたその時……。
「マシュー!!」
ベリウスだった。
「おめでとう。俺も後から行くから、待ってろよ!」
「……ああ。ありがとう…………」
どれだけベリウスがやさしいのか、今わかった気がした。
ベリウスはマシューが危なくなったら助けだせるように、ずっと見張っていたのだ。たとえ、自分も殺されたとしても……。
だから、マシューはありがとうのほかに、感謝のあまり言葉を思いつかなかったのだ。
「ありがとう……。ベリウス」
こうして、死の世界と別れを告げたマシューであった。
第2章、終わりました~。長かったですね。
今回は死の世界で活躍したマシューでした。みなさん、楽しんでいただけたでしょうか?楽しんでもらえたのなら、本当にうれしいです。
それと、ここまで読んでいただいて本当に有難うございます。
第3章も、是非読んでください。
これからも悪魔と神の子、宜しくお願いします。