第47話 左腕のミー
マシューたちは魔龍たちとは別行動だったため、クアトルの者に襲われていることに気がつかなかった。そして……、傷を癒すために休息を取っているマシューたちの前に、そのクアトルの者が現れるのであった。
「こんばんわ~、アルゴンのみなさん。急ではありますが、殺されてもらえないでしょうか?」
金髪に黄色い服装の女……。黄色が好きなのか? と言いたくなるくらいだった。
「まさか……、クアトルなのか?」
「よくご存じで。でも、知ったところで何も変わらないけどね!!」
突然、そいつは持っている杖を地面に突き刺す。それと同時に、アイスが血を吐きながら倒れる。
「ぐはっ……」
「アイス!!」
一体何が……?
「一応教えておくけど、そいつの内臓潰したから」
「!!」
本当に何をしたんだ? こいつは……。
「あたしが何をしたかわからないんでしょ? やっぱり図星?」
「てめえ……。一体どんな能力を……」
「クアトルのことを知ってるんだったら、こう言えばわかるかしら……。あたしは左腕のミー。わかる?」
「……わからねえな」
「……そう。だったら、知らずに死ぬがいいわ!!」
そのとき、ミーの姿が消える。そして、気付いた時には、ネリアとリーティスがやられていた。
「畜生……」
「ははははははははははははは!! 次に死ぬのは誰かなあ?」
「ベリウス、ここはいったん……」
「ああ。こんな化け物の相手なんかできるか!! 退くぞ!!」
「あたしがおとなしく待っているとでも?とんだおバカさんたちだねえ」
「く……」
マシューはアイスを、ベリウスはネリアとリーティスを抱えて逃げる。そのとき、新手が目の前に現れた。
あの金髪の少女だった。
「おやおや、獲物が増えてしまったねえ」
何なんだ。こいつの自信はどこから湧いてくる?
「テキフクスウハッケン。ジンソクニハイジョシマス」
「何を言ってんだか……。あたしに勝てると思うなんてね……。本当に哀れな存在だよ」
また杖を地面に突き刺す。
「くそ……」
マシューは猛ダッシュで逃げる。それに続いてベリウスも……。そのとき、マシューが元いた場所に妙なものがあった。
杖の先端。
地面の中にあるはずの杖の先端だけがその場に出ていたのだ。
「空間移動」
「え?」
「それがあたしの能力よ」
次は杖を横に振る。
だが、標的はあの金髪の少女だった。
少女の顔の右側から杖が出てきて、少女を殴り飛ばす。しかも、威力が尋常ではなかった。その証拠として、少女は何メートルも吹き飛ばされたのだから……。
「じゃ、次はあんたらね」
「逃げるぞ!!」
「させ」
させないという言葉は途中で遮られた。理由はあの少女が一番危険とみなしたミーを攻撃したからだ。
「あいつに助けられるとはな……。だが、今は……」
マシューたちはその少女に任せて、何とか逃げきるのだった。