第44話 裏切りとEML(電磁砲)
爆発によって巻き上げられたアスファルトが雨のように降る。そして……、勝者が決まる。
アリナ。
敗者はネリアだったのだ。だが……。
「くそ……。最後の最後でダメージを受けるとは……。情けない。だが、私をここまで追い詰めたものは久しぶりだ。それだけは褒めてやろう」
かなりふらついているアリナ。そして……。
「次はだれにするか……。そうだな……。あの氷野郎でも……」
その瞬間、アリナの背後から何者かが襲いかかる。
腹を槍で貫かれ、血まみれになるアリナ。
「な……に……!?」
「お前たちはもう用済みだ。俺たちはもう正体を隠さない」
お前たち? まさか……。
そう思ったアリナはロットに目を向ける……。だが、妙なやつは近くにはいない。それと、今この状況に気付いているのは、あの氷野郎ただ一人だった。
氷野郎はただ立ち尽くしていた。理解ができずに……。
「いったい……、何を企んでいる?」
「俺たちはこの世界のことを知るために、お前たちを利用したに過ぎない。まあ、少なくともあの男だけは気付いていたがな」
「ロットのことか……」
「いや……、シオンのことだ」
「!!」
「そろそろ引くか。ばれるのは性に合わんからな」
そう言い残し、その者はこの場から去って行った。
そして、アリナは地面に崩れ落ちる。魂の灯を失いながら……。
一方、マシューとベリウスVSロットは……。
「そういえばさあ、俺の能力まだ知らねえよな?」
「……」
マシューとベリウスは少し目を合わせる。とは言っても、身長差がありすぎるのだが……。
「この際だ、俺の能力を見せてやろう。そして、絶望の渦に吞まれるがいい」
ロットの姿が変化する。そして……。
「機械の悪魔だと!?」
ベリウスが驚きのあまり、少し叫び気味だった。
「ああ。俺の能力は機械だ。とは言っても、少し理解しにくいかもしれんな。わかりやすく言うならば、そうだな……、EML(ElectroMagnetic Launcher)って知ってるか? ようは物体を電磁誘導によって加速させることだ。つまり、こういうことだ」
装着してあった未来的な銃を取り出し、エネルギーを充填する。そして、銃口を適当な建物へ向けて、発砲する。
すると、巨大な電気の塊みたいなのが銃口から出てきて、それがその建物を粉砕する。
銃の形的にはハンドガンぐらいの大きさなのだが、この威力はかなりひどいものだった。
そして、次は銃口をベリウスへ向ける。
「てめえは巨大な故に力はあっても相手の攻撃をかわすのは難しい。かと言って、ちょっとした攻撃ではびくともしない。なら、巨大な力で……。そう思っても、この大きさじゃあ普通なら中々その力は出せない。体が大きいとてめえの攻撃をかわせないしな。だが、俺は違う。俺は巨大な力をこの小さい体のままで習得した。つまりベリウス、てめえは戦力外だ」
そのとき、そのEMLによって発砲された電気の弾丸を、ベリウスは腹にまともに食らってしまう。
「ぐ……」
「ベリウス!!」
ベリウスは腹に風穴を開けられたため、その場に倒れたのだった。元の姿になりながら……。血を流しながら……。
「ロットオオオオオオオオオオオオオオオォォォォォォォ!!!!」
怒り狂うマシュー。このままでは、全員やられてしまう――。