第38話 能力封じ
鎌を持つ二人の悪魔が刃を交えていた。そのとき、マシューの背後で声がした。
「おい、お前ひとりで闘うな。俺達、全員で……」
「だめだ!! これは俺の闘い。生きていた頃、ギルドの戦争として刃を交えた相手だ。俺としては、自分のことぐらい自分でけりをつけたいんだ」
「そうか……。死ぬなよ」
「もちろんだ、ベリウス。こいつは絶対に躊躇わない。俺のギルドを攻撃した奴だからな!」
刃がさらに激しく交える。そのときだった。デッサイが妙なことを言い出したのだ。
「俺の能力、確か知らなかったよな?」
「……それがなんだ」
「俺の能力は特殊だからな。あまり知られたくないんだが……。まあ、この際教えてやる」
その瞬間、デッサイが左手を伸ばし、マシューに触れる。すると、爆発音に似た音がした。
そして、なんとマシューが元の姿になっていた。紫の炎は出ているが……。
「な……!!」
「俺の能力は、いわゆる能力封じってやつだな。相手が悪魔の姿になっても、強制的に元に戻せる。そうすることで、相手が全力を出せないようにする。つまり、かなり俺の方が有利になるってことだ」
「くそ……!!」
俺は剣を振り回してデッサイを倒そうとするが、かすりもしないのだった。
このままでは、絶対に勝てない。
マシューの考えが正しければ、奴自身もその能力のせいで変身できないだろうが、それでも勝てないだろう。元から悪魔の姿なら別の話だが……。どのみち、勝てないことに変わりはない。
「うおおおおおおおお!!」
マシューはこの姿で奥義をしようとするが、全くうまくいかない。炎が安定せず、必ず変なところに衝撃波を放ってしまうのだ。
「くそったれが……」
「まあ、そう焦るな。そいつらも参戦すれば勝てるかもしれんぞ」
「それじゃあ、意味がねえんだよ!!」
「やれやれ……」
「俺は……絶対勝つ」
もちろんそんなのはハッタリだ。マシューは仲間を簡単には頼れなかった。だからこそ、そんなことを言ったのだ。
「ま、俺としては一人ずつの方が楽なんだけど……」
リーティスと同じく、マシューも一撃で葬られる。だが、マシューが倒れている途中で、一人の仲間がデッサイを倒そうと立ち上がる。
リーティスだった。
両手に剣を持ち、デッサイを背後から刺したのだ。
「き……さま……。まだ……生きていたのか……」
「詰めがあまいよ」
続けて、デッサイを二つの剣が襲う。
傷を負っているのは双方とも同じだが、リーティスの方が少し動きが速かった。そして……。
「くそ……。何で俺がこんなやつに……。まさか、お前変身を……」
デッサイが左手をまた伸ばし、リーティスに触れる。だが、リーティスに変化は何一つなかった。
「…………」
デッサイは目を見開き、言葉を失う。
「私は、召喚者だから……。変身は絶対にしないの。召喚者は召喚によって能力を上げるからね」
「くっそおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!」
デッサイは相性の悪い相手と出会ったことを後悔した雄叫びを上げた。そして、デッサイはリーティスの剣によって殺されたのだった。