第31話 仲間割れ?
ここはデサーズの隠れ家。
ここでは、マシューたちアルゴンを倒すための会議が密かに行われていた。
「まずは様子見として誰か一人を闘わせよう」
リーダーのアルマが続けて最初に闘う者を決める。
「それじゃ、お前でいいな。さっきも言ったように、様子見だから無理はしないように」
「……いいだろう。あんな奴ら、私ひとりで十分だ」
「ふっ……。任せたぞ」
そして、ここはマシューたちアルゴンの隠れ家。
こちらでは、魔龍たちをできるだけたくさん集めて、デサーズが結成されたことを知らせていた。
当然のことだが、魔龍たちは体が大きい分、隠れることが難しい。だから、このことを知らせたらすぐにそれぞれの隠れ場へ行ったため、マシューたちと一緒にいるのは、サラムだけだった。
その残ったサラムと、マシューたちアルゴンはデサーズ対策の作戦を練っていたのだ。
「さあて、相手もチームがくっ付いたのなると、かなり厄介な状況だな。しかも、片方のリーダーは炎を自分の物にするから、リーダーの俺にとってはつらい敵だ」
確かに、リーダーのベリウスは常に炎を纏っている悪魔。当たり前だが、俺のように氷の力は持っていないのだ。たぶん、相反する能力を使う奴は俺を含めても五人もいないだろう。それだけ珍しいものなのだ。
そういうわけで、俺達のリーダーは相手のリーダーに全く歯が立たない。だからこそ、いい作戦がほしいのだが……、全く思いつかない俺たちだった。
「魔龍さんたちも、基本炎だしなあ……」
本当に最悪だ。片方のリーダーがだめなら、せめてもう片方だけでも……。ということすらも、認められない炎使いの塊だった。ロットもいるっていうのに……。
「はあ、何かいい作戦ないか? 誰か、教えてくれ」
「とにかく、たとえあんたたちが闘えなくても、あたしたちがいるんだから、心配はいらないわよ」
ネリアが自身を持って言っていたのだ。全く、頼もしい限りだ。
「何なら、あたしひとりで」
「やめとけ」
ベリウスが途中で遮る。しかも、さっきと雰囲気がまるで違う。
「お前ひとりじゃ、誰一人倒せないのはわかっているのだろう? 前もそんなことを言っていなかったか?」
「なっ……」
「言いすぎじゃないか? ベリウス」
アイスがちょっと怒っている。
「いいわよ。あたしだって、本気を出せば…………。あんたにはまだ見せてないけどね」
「そうか? じゃあ、こっからさきは単独行動にする。好きにするがいい」
「おい……」
「……わかった」
「お前ら……、何意地張ってんだ」
「…………」
俺は我慢ができずに説教っぽく叫んでいた。
「ったく、馬鹿か? お前ら……。仲間割ればっかしてたら、相手の思う壺だろ。こんなんじゃあ、いい作戦思いついても全然うまくいかねえだろ。いい加減、頭冷やせ!」
「そうだな……。悪かった……」
「あたしも……ごめん……」
二人とも、何とか仲直りできたみたいだ。
そんな感じで、結構いい雰囲気になりかけてたのに……。敵が現れたせいで、台無しだ。
しかも、そいつは隠れ家の壁を壊してきやがった。これじゃあ、隠れ家にならないから、また移動しなくちゃいけない。はあ、本当についてないや……。
「私の名は、エリー。そっちのリーダー、名を名乗りなさい」
黒髪に真っ赤なマント、そして、巨大な槍。身長の倍くらいありそうな、とにかく巨大な槍だった。
「リーダーは俺だ。ベリウスという名だ」
「ベリウス、ねえ。特別有名でもなさそうね。安心したわ、相手のリーダーがそんなに強そうじゃなくて……」
「……おもしれえ。マシュー、ちょっと闘ってみろ」
「はあ!? 何で俺? 挑発してんだから、あんたが闘えば……」
「修行の成果、試してみたくはないのか?」
「……いいんだな? 本当に」
「ああ……」
「どうでもいいから、さっさと来な。何なら、全員でも」
「俺一人で十分!」
奴の挑発を無理やり遮った。
俺は悪魔の姿になり、剣も鎌に変化させた。そして、死の世界でチームとチームの戦争が始まる。