第25話 アルスとファイアーズ
「う……ん?」
気がつくとあの部屋にいた。そう……、あの隠された部屋に……。
「気がついたみたいね」
「いったい……、どうなって……」
「まだ横になってた方がいいかも……。ちょっと力が入りすぎたみたいだから……」
「お前……」
「そ。あのとき、あんたの理性がどこかに行っちゃいそうだったから、一発で終わらせておいたの。まあ、あんたはそれなりに力があるみたいだったから、仲間にしてやってもいい」
「素直に言えよ、仲間にしたいって。このアルスの仲間に……」
「ったく……。リーダーだからって調子に乗るんじゃないよ、ベリウス」
だが、その顔は少し笑っているように見えた。
「なあ、アルスって何だ?」
「このチームの名だ。んで、加わる気はないのか? まあ、それしか手はないだろうがな……。この世界じゃあ、お前が最初に会った奴が外をうろうろしてるからな。それと、一応死の世界だが、普通に死ねる。心臓を貫かれても生きているなんて考えを持ってるなら今のうちに捨てろ」
「もし、死んだらどうなるんだ?」
「……この世界から消える」
その言葉には嘘など欠片もなかった。故に俺は、こうすることに決めた。
「アルスの……仲間にしてくれ」
「……ようこそ、アルスへ」
アルスの四人全員が声をそろえて言った。
「そういえば、あたしたちはまだ名乗ってなかったね。あたしは、ネリア。こっちは、リーティス」
金髪の女がそう言った。
「よろしく、ネリアとリーティス」
「んじゃあ、もう一つ言っておこう。俺はお前に生き返る方法があると言ったな。その方法を教えておく。それは、お前が最初に会ったあいつを殺すこと。ただし、一人につき一人しか生き返れない。つまり、いやでも強くならなければ生き返ることはできないってことだ。だから、いますぐ修行を始めるとしよう。お前たちもだ」
「まさか、修行って……。無理よ、まだあいつらには勝てない」
何だ? ベリウスとネリアが何か言い合っているようだが……。
「それに、まだ奥義もうまく使えないのがいるってのに……。無理に決まってる」
「なあ、それって俺のことだよな。奥義って、いったい何なんだ? ひょっとして、俺の場合鎌のことなのか?」
「かもしれんが、まだお前の力ははっきりとはわかっていない。奥義ってのはな、簡単にいえば自分自身の一番強い技だ。うまくいけば、相手の気力を奪うこともできる。つまり、その場合はハエを叩くのと同じくらい楽に勝つことができる」
「それをやればあいつにも……」
「やめておけ。あいつはちょっとやそっとじゃ気力を奪うことはできねえ。ようするに、力で押すしかないってことだ。ちなみに、俺が闘っても歯が立たねえほど強いからな」
「そんな……。しかも、一人で……なんだろ?」
「……ああ」
絶望的だ。その言葉が頭の中で暴れまわる。
「……で、その修行の相手って、誰なんだ?」
「アルマ率いるチーム、ファイアーズ」
!! この名前には聞き覚えがある。まさか……、あいつが……?
「おい、大丈夫か? 震えてるぞ」
「……アルマってのは、俺が殺した悪魔なんだ……」
この場は、俺の一言によって凍りついたのだった。もし、本当に俺たちでは敵わないのだとしたら、奴は……、どれくらい強くなっているのだ?