第24話 強きもの
ここは死者の世界。この俺、マシューはベリウスと一緒に下水道の最深部と思われる場所に来た。
ここは本来ならとても暗いはずだが、ベリウスが纏っている炎のおかげで結構明るかった。
「おい、ベリウス。ここは……行き止まりじゃあないのか?」
「まあ、少し待て。確か、この辺に……」
ベリウスは、炎で見えているはずなのに壁を手で探っていた。
十秒くらい手で探っていても、不思議と壁は炎で焦げていたりしなかった。そして……。
「あったぞ」
ベリウスが壁を押すと、その押した部分だけがへこみ、壁が動いてひとつの部屋が現れた。
「よ、新入りを連れてきてやったぞ」
部屋の中にいたのは、銀髪で上半身は裸の上に黒のコートを着ていて、ズボンはどこにでもありそうなズボンといった男が一人と、金髪と茶髪の女が二人。この二人は普通の服装で、仲良くテーブルの上でトランプをしていた。
「新入り、ねえ」
男が寝ころんでいる状態でそう言うと、急に立ち上がって、
「お前、名は何だ?」
「マシュー・ボルス……」
「そ。俺は、アイスって呼ばれてる。俺はな、名前を覚えてねえんだ。だから、氷の力を持ってるから、アイス」
「そうか……」
「まあ、気にするこたあねえよ。新入り」
アイスは少し笑ってそう言った。
「それで……、そこの二人は?」
「私は」
「あたしは」
金髪の女が、茶髪の女の言葉を無理やり遮った。
「あたしは、あんたと組むつもりはない。うちのギルドでないからね。それにあんた、あんまり強そうに見えないしね」
「……へえ、上等だ。こちらとしても、確かにこの世界については知らないが、かといって、お前ら以外の奴に聞けばいいしな。じゃ、帰らせてもらおうか」
「ま、この世界じゃああんたみたいな三下はすぐにやられるのがオチだけどね」
俺はついに我慢の限界を超えた。悪魔の姿になり、(なぜか、この間のように剣は変化しなかったが)紫の炎に包まれる。
「いますぐ謝るなら許してやってもいいのだが……」
「そのセリフ、弱者が言っていいもんじゃないんだけどな」
「おい、お前らそこまでにしとけ」
ベリウスの言葉はこの二人には届かなかった。
金髪の女は何も武器を持たずに、突っ込んできた。
「武器を持ってなくても、容赦はしねえぞお!!」
俺は、剣を振って炎の爆発を引き起こす。だが、何度やっても相手が早すぎて一発も当たらない。
「くそったれが!」
「どうした、どうした。そんなんじゃ、この世界の誰一人倒せやしないよ。威力も低そうだし、スピードも遅いんじゃあ何がいいんだか……」
「ほざけ!!」
くそっ、全然当たらねえ。何なんだこいつ……。
「じゃ、そろそろ反撃しますか」
早い。とにかく、いままであった奴らとは比べ物にならないほどの速さ。当然、俺はかわすことなどできるはずもなく、あいつの蹴りをくらい、ぶっ飛んだ。ここは割と広いため、壁にはぶつからなかったが、10メートルぐらいぶっ飛んだ。一回もバウンドせずに・・・。
「ま、そんなんじゃあ仲間にする価値なし。どうしても、なりたいなら修行してきな」
その直後、やっとあの時の鎌に剣が変化した。
「おい、まだ終わってねえだろうが。あぁ!!」
俺は立ち上がりながら、そう言った。
「ふっ……。いいね、そうこなくちゃ」