第23話 死者(ベリウス)
「うう……、ここは?」
俺の名前はマシュー。悪魔と神の血を継ぐもの。
俺は、気がつくと十字の交差点のど真ん中で倒れていたのだ。辺りは真っ暗な夜……。そのせいか、車の気配は全くなかった。そして、さらに人の気配も全く感じなかった。
「いったい……、どういう……」
「オシエテアゲヨウカ?」
そんな中、一人の金髪の少女が現れる。切れ味のよさそうな剣を持って……。
「おい……、お前、何し」
何してんだ、という言葉は爆発音によって遮られた。
その少女の目の前が爆発していたのだった。
「アラタニテキハッケン」
そういうと、少女から見て右斜め上を少女が見上げた。
「ちっ、ばれちゃあしょうがねえ」
そいつが上から飛び降りてきたせいで、落下地点のアスファルトがばらばらになっていた。
酸素の代わりに血を取り入れたような、真っ赤な炎に包まれた…………、悪魔? 顔は炎のせいでよく見えない。
「おい、そこのお前。消えたくなけりゃここから逃げるぞ」
「は?」
「生きたいなら、つべこべ言わずついてこい」
その悪魔は少女がいるのとは逆の方向に猛ダッシュで逃げた。
しかも、無茶苦茶速い。
「早くしろ。小僧!!」
「……俺を小僧呼ばわりか……。上等じゃねえか」
俺もあいつに負けないくらいの速さで少女から逃げた。
そして……。
ここはずいぶんと使われてなさそうな、下水道。
「はあ、はあ。くそっ、いきなり何なんだ。これは……。確か俺って死んだはずじゃ……」
「そのとおり。お前は死んでいる。だが、お前は生きている。これはどういうことだろうか。教えてやってもいいが、とりあえずまずは、自己紹介から。俺はベリウス・アルダート。お前は?」
「……マシュー・ボルス」
「そうか。じゃあマシュー君、君はなぜ生きているか知りたいか?」
「……ああ」
ベリウスは少し笑った。
「まあ、生きていると言うと語弊があるのだが……。実を言うと、ここは死者の世界。そう、君はもう死んでいる。だが、絶望する必要もなかろう。我々は、最近生き返る方法を知った」
「我々……だと? 生き返る方法?」
「……知りたければ、俺と一緒に来るといい。歓迎するぞ、アルスは……」
俺は何も知らない。だから、仕方なくついて行くしかなかったのだった……。