第22話 悲しき死
マシューVSデス。それは生の力を扱えないマシューにとって、かなり分が悪い闘いだった。
そもそも、死という力そのものが反則的な能力に対して、炎や氷などの何の特殊能力もない力を扱うマシューにはかなり不利である。
「くそ……、強い、強すぎる」
「はっはっは。だがよお、そんなこと言っても手加減などしないぞ」
「ったりめえだ。てめえは、この俺が絶対倒す。命に代えてもなあ!!」
「そうだ、それでいいんだよ。そういう度胸がねえとつまんねえからな」
互いの武器がぶつかり合うたびに、火花が散る。俺は少し距離をとり、
「これならどうだ!!」
剣を上から下へ振り下ろして、炎の衝撃波を飛ばす。
「くだらん、こんなもの我が死の力によって潰してくれる」
デスは掌を前に出し、再び魔法陣を出した。その魔法陣と俺の衝撃波がぶつかった。
爪で黒板をひっかいたときのような、いやな音が響いた。
そして、そこで爆発が起こり、煙が宙を舞っていた。煙が晴れた時、デスは無傷だった。
「おいおい……マジかよ……」
デスの目の前の床は、焦げていたり壊れていたり、本当に破壊力は恐ろしいものだったはずなのに……。
「死の力にはなあ、殺すための力だけじゃなく防御の力も備わっているんだよ」
「……ありえねえ」
俺はただ漠然としていた。その隙をデスは見逃さなかった。
魔法陣が俺を囲み、俺はあらゆる恐怖に襲われた。重力によって潰される恐怖、息のできない恐怖、切り裂かれる恐怖……。
やべえ、このままじゃ殺される!!!
「くははははははははははははははははははははははは。死ね死ね死ねえ!! てめえはここで終わりだ!!」
く……。死んじまうのか……、俺……。
「はははははははは……あ?」
突然、魔法陣もぶち壊すぐらいの爆発が俺の周囲で起きた。
「……殺す」
「え……?」
真の悪魔の姿になり、さらに、剣が巨大な紫の刃をもつ鎌になっていた。炎の量も、剣のときの倍ぐらい纏っていた。
俺はぶつぶつと呪文を唱え、鎌を左から右へ振り回した。
すると、さっきとは比べ物にならないくらい巨大な紫の衝撃波が飛んで行った。
「な……!!」
今度は魔法陣で防いだ時、少しずつ魔法陣が傷ついていった。
「……化け物め!」
最後には魔法陣も壊れ、この衝撃波をくらった。
そのとき、デスの周りが炎で焦げていなかったのだ。
デスは、何とか持ちこたえていた。ふらふらになっているが、まだ闘うつもりのようだった。
「くそっ、くそっ、くそっ。こんなバカなことが……」
「さっさと死ね。このくそ野郎が」
「はっ、誰が死ぬかよ。俺は死を司るもの。簡単に死ねるわけが……ねえだろうがよお!!!!」
「哀れだな……」
今度は同時に俺の鎌の攻撃とデスの死の力がぶつかり合った。
ほぼ互角。
「ちっ、さっさとあきらめろ」
「うるせえ!」
また嫌な音が城の中全体に響き渡っているようだった。
「うおおおおおおおおおおおおおおお!!!」
「くそったれがあああああああああああああ!!!」
巨大な爆発が起きた。
マシューとデスのいた位置が逆になっていた。お互いに背を向けて……。
「お前の……勝ち…………だ……」
デスが倒れたのだった。だが、
「畜生……」
マシューも続いて倒れたのであった。
「マシュー……」
力を振り絞って、気絶から覚めたシオーネが近づいてきた。
「シ……オー……ネ」
俺は仰向けになった。
「マシュー……」
シオーネの頬から俺の顔に涙がこぼれた。
「うう……」
「泣かないで……くれ」
「でも……、マシューが……」
「……いいか、よく……聞いてくれ。俺はもう……長くはもたない」
シオーネの顔が一瞬驚きの顔に変わって、また悲しそうな顔になった。
「今まで……いろんなことが……あった。ギルドが……潰されそうに……なったりとかな……」
「うん……」
「それで……ごふっ」
血が口から流れる。
「それで……ギルドを……守っていって……ほしいんだ」
「そんなこと……」
「お前には、人生を……俺のために……使わないでほしいんだ。お前なら、俺を生き返らせようと……棒に振るだろう。だが、そんなことは……お願いだから……しないでくれ」
シオーネは、少し躊躇ったのか一瞬間があいた後、うなずいた。
「わかってくれたなら……いい。俺の分も、ギルドを……守って……く…………れ……」
「マシュー!!」
「ありが……とう……。お前のこと――――」
私は、「お前のこと」の後が声が小さすぎて聞き取れなかった。だけど、たぶんこのようなことを言ったのだと私は信じた。好きだった……と。
第一章、やっと終わりました。
ここまで読んでくださった方々、本当にありがとうございます。
まだまだ下手ではありますが、これからも暖かい目で読んでくださるとうれしいです。
あと、よろしければ感想などもらえると幸いです。
悪魔と神の子、これからも宜しくお願いします。