第19話 魔剣
ここはマシューがいた町。そして、この俺シオン・レクータが住んでいた町でもある。
どういうことか、最近俺を殺そうとしてくる奴が多い。まったく、勝てないというのに……。馬鹿な奴らだ。
「おい」
後ろから声をかけてきたその男の集団は、皆いろんな武器を持って震えている。中には銃を持った奴も……。本当に馬鹿げてる。
「うおおおおおお」
そう叫びながら突進してくるが、俺の前ではどんな力も無力だ。そう、俺の力はあらゆる物体を操る。銃を撃てば撥ね返せばいいし、剣とかで攻撃してくるものならそれを砕けばいい。
そんなわけで、俺を襲ってきた連中は皆死んでいる。生き残りなどいない。
「はあ……、めんどくせ」
だが、この日はいつもと違った。大量の警察と、その中心に剣を持った女がいた。茶色の髪を長くのばしたどこにでもいそうな女。
「シオン・レクータ、貴様は大量殺人犯として逮捕する。おとなしくしない場合は、射殺する」
馬鹿かこいつらは……。やっぱり、雑魚をいくら殺してもつまんねえ。だけど、そっちがやるきなら……。
「そうかい、んじゃあ、殺してみろよ。ああ?」
「……殺せ、貴様のような契約者はどんな手を使っても殺さねばならない」
「へえ、あんた物知りだな。ひょっとして、あんたも能力者か? なあ」
「返答する義務はない、さっさと射殺しろ」
たくさんの銃弾がとんでくるなか、俺は全く動かなかった。だが、能力はもちろん使った。銃弾が俺の目の前で止まり、全て撥ね返った。
言うまでもないが、敵は壊滅状態だった。たった一瞬で……。
「ひゃはははははははははははは!! いいねえ、最高だ。楽しすぎるぜ!!」
「く……」
「なあ、あんた能力あるなら使ってみろよ。ああ? その剣は飾りかあ?」
「いいだろう、私の魔剣エアリウスによって殺されるがいい!!」
女との間にある空気を操って、こいつを吹き飛ばした。
「ああ? 聞こえねえなあ。俺は耳が遠くってなあ。で、この程度か? 魔剣ってのは、悪魔の力が宿っている剣。そんな簡単には死なねえよなあ。もっと俺を楽しませてくれよ」
「何という力……」
「ぎひっ、おい、本当にもう闘えねえんじゃねえよなあ!!」
体制を立て直す前に、こいつの腹を蹴とばした。
「どうだ? 俺の蹴りの威力は。まあ、これでも相当加減してんだけどなあ」
そう言って、俺は傍にあったビルを、殴りでぶっ壊した。ついでに、そのビルの周辺にある建物も、ビルの一部を使って壊した。
「すげえだろ? 俺の拳の威力。そろそろ、終わりにしてやるぜ!!」
「エアリウス!!」
剣から暴風がとんできた。
「こんなもんで俺がやられると思ってんのか? 三下ぁ!!」
俺は暴風を撥ね返した。
「ぐ……」
だが、あいつはぎりぎりでそれをかわした。
「撤退するしかないか……」
「はあ!? 誰がさせるかよ!!」
「悪いが、お前と闘っても勝てる見込みが全くないんでな。ここは撤退させてもらう」
あいつは風の力で逃げたのだった。その気になれば、それをつぶせただろうが面倒くさかったから俺はやらなかった。
「ちっ……。めんどくせえ」
俺は時が来るまでこの町で隠れることにしたのだった。
「もっともっと強くなれ。…………マシュー」