第18話 最強の契約者
ニア……。うそだろ……、あいつが負けるわけねえ。
相手は……雷男のレイ。相性はそんなに悪くないはず……。
「く……」
「おやおやおやあ? もうギブアップですか?」
「……」
「ったく、弱すぎてつまんねえな。もっと骨のあるやついねえのかよ」
やろう!! よくも俺の仲間を!! 絶対許さねえ!!
だが、俺がロットを無視して奴を殺す前に、ルシファーが動いた。
「貴様……ただではすまさんぞ!」
「へえ、おもしろい。てめえの奥義、俺に試してみろ」
「無論……そのつもりだ」
ルシファーの雰囲気が一変した。が、ルシファーがレイを攻撃する前に、新たに何者かが現れたのだった。どこかで会ったことあるような……。銀髪に青の瞳といった見た目だった。
「てめえら、俺の獲物に何勝手に手え出してやがる。さっさと消えねえと、ぶっ殺すぞ!!!」
「はあ? 誰だてめえはよお」
レイが電撃を掌から放った。本当なら、あいつはビリビリとしびれて、倒れるはずだった。でも、本当はあいつは無傷で逆に、レイが傷を負っていた。
どうやら、あいつはレイの電撃を撥ね返したみたいだった。
「な……、どういうことだ!? 俺の電撃が効かないのか?」
「俺にはなあ、攻撃どころか触れることもできねえ能力があるんだぜ。さてここで問題です。俺の能力はいったい何でしょうか?」
「ふざけるな! てめえ何者なんだ?」
「何者……か。そうだなあ、契約者、とでも言っておこうか」
「うそだ。契約者の分際でこんな能力……あるはずが……」
「あるからここにいるわけだが……」
何なんだこいつは!? ありえねえ、こんな能力……。どんな能力かわからないが、触れることもできないだと!? こんなやつ、いったいどうやったら倒せるんだ?
「あ、そうそう。一応忠告しとくわ。俺に触れたらてめえらの体はドカン、だ」
「ふざけんじゃねえぞ!! この三下があ!!」
「くっ……くはははははは。俺に向かって三下だあ? 笑わせんじゃねえよ。俺は悪魔の中でも契約者の中でも最強の存在なんだよ!」
「ならこの俺を殺してみろ!」
レイが(おそらく)全力で電撃を放った。が、結果は同じ。逆にレイが倒れたのだった。
「レイ!!」
ロットも含め、敵のギルドの全員があいつを攻撃した。
「はいはい、そんな攻撃、俺の前じゃあ無力なんだよお!!」
またしても結果は同じだった。
しかも、誰ひとり生き残ることができなかったのだ。
「うそ……だろ?」
この場にいる全員が誰一人例外なく混乱していた。
「やっぱり、てめえらじゃあ俺には勝てねえか……。情けねえなあ、おい。団体で攻撃しておきながら、傷一つつけられねえとはな」
ありえねえ!!
「さて、掃除も終わったことだし、マシュー、俺のこと覚えてるよな?」
「え……?いや、誰だっけ?」
「はあ? ふざけるんじゃねえ。俺が誰か言ってみろ」
「いや、本当に記憶にないんだけど……」
「ちっ、シオンって言えばわかるのかよ?」
「え? お前、シオンなのか?」
「そうだよ。何だよ、そんな簡単に忘れられるやつだったのか? 俺はよお」
「……すまん。て言うかお前、アリエルとかと」
「ああ、そうだ」
俺が言い終わる前にシオンが遮った。
「俺は、あのときからお前の周りで起きていることを知った」
あのとき? いつだ?
「そう、サーシャに出会ってからなあ!! 今回はあいさつだけで帰ってやるが、次からは……」
「……いいだろう」
「じゃあな。あ、そうそう俺の能力言ってなかったよな」
「別に言わなくていいぜ」
「いや、あえて教えておいてやる。俺の能力は物体を操ること。まあ、それなりに少しだけ制限があるがな」
「何だと!? 操るってことはさっきのあれは全部……」
「そうだ、俺が攻撃の向きを全て逆にしただけのこと」
「…………」
「いいぜ、そういう絶望に染まった顔ってのはよお。すっげえ好きなんだよなあ」
「く……」
「んじゃ、今度こそ本当にさよならだ。カス!!!」
最後に振り向いて言い放ったその言葉は、深く俺の心に刻まれたのだった。