第15話 王の言葉
マシュー対ニア。それはどちらが勝ってもおかしくない勝負。
「風の力はかたいものをも切り裂く……か」
「私の風で切れないものはない」
「そうかい。だとしても、当たらなければ意味を持たない」
このような言い合いをしながら闘いは続いていた。そのとき、俺の背後から気配がした。
シオーネだった。
「お前、何でここにいる?」
「どいて、そいつはあたしがやる」
「今のお前だと危ないから俺がやる」
シオーネの目はほとんど意識がないような虚ろな目をしていた。
「とりあえずさがってろ」
「そのセリフ、そのまま返そう」
シオーネが一歩、また一歩と前に進みだした。
「おい、俺の言うことを聞け!」
「私の方が強いから……。大丈夫」
シオーネは意識がなさそうに見えても、恐ろしいぐらいの量の力を放っていた。
「風の私には絶対勝てないよ」
「……どうかな」
シオーネの手が凍り始め、鋭い爪のようになった。
「一瞬で終わらせる」
何が起きたのか、理解できなかった。だが、少しずつ時間が経つにつれて、分かってきた。ニアが凍りついて動けなくなっていたのだ。それと、シオーネの背中にも巨大な氷の翼がついていた。
「な……!!」
言葉も出ない。本当に呆れかえる力だ。少しシオーネをあまく見ていたようだ。確かにシオーネの方が強いのかもしれない。
「どう? 動けないでしょ」
「何で? いつの間に……」
「すげえな、シオーネ。びっくりしたよ、こんなに強かったなんて……」
シオーネは笑っていた。どうやら、少しは意識があるようだ。だが、そんな安心も一瞬だった。
シオーネの後ろから、何者かが襲って来たのだ。
シオーネはたったの一撃で気絶させられた。不意打ちとはいえ、あまりにも力の差がないと一撃では無理だ。おそらくこいつは……。
「私は誇り高き水の王、アリエル」
やはり、十の大魔王の一人。青い髪を長くのばした女だった。
「……俺に何か用か?」
「さがれ、マシュー。ここはこのロドスに」
ロドスがすぐにやってきた。だが、俺はシオーネを攻撃されたので、引き下がらなかった。
「ロドス、少し待ってくれ」
「……わかった」
どうやら俺の思いが伝わったようだ。
「アリエルと言ったか……。お前、俺に何の用だ?」
「一つ言伝を頼まれてねえ。シオンに」
「何っ!!」
「やっぱり知り合いか……。まあ、そんなことはどうでもいい。ちゃんと役目を果たせばそれで報酬は貰えるからねえ」
報酬だと、シオンは十の大魔王を金で雇っているのか?いや、それよりも……。
「言伝ってのは何だ?」
「近いうちに、そちらのお仲間全員殺す、だとさ」
シオン……。一体何を……。
「ま、用はそれだけ。またどこかで会うだろう」
そう言って、アリエルは去って行った。