第11話 謎を呼ぶ闘い
悪魔のバンパイア、サーシャ。俺はいまそいつと闘っている最中だ。
「中々なパワーじゃないか、マシュー」
「オオオオオォォォォォ」
「ふん……」
サーシャは俺の顔面めがけて蹴りを入れてきた。だが、俺はそれを軽々と受け止めた。そして、サーシャの体を深く斬りつけた。
「うぐっ、理性を亡くした奴にここまでやられるとはな、恥だ」
サーシャは蹴りや殴りなど、いろいろな攻撃をしてきた。俺は何回かは避けたが、七,八回は避けれなかった。
「グオオオオオォォォ」
「終わりだ!!」
サーシャの蹴りが俺の顔に当たった。俺は吹っ飛ばされたあと、少し意識を取り戻しかけていた。そのとき、本来の標的の契約者が現れた。髪の毛や服などがほとんど黒で、その分目立つ白の仮面の男。
「何を手加減しているのだ? さっさとけりをつけろ」
「わかってるよ、それがあの人の命令なんだろ」
「なら、早くしろ」
どういうことだ。こいつら組んでいたのか……。ひょっとしていままでの契約者のことはうそなのか? そう思った。
「そうだ、一応殺す前におもしろいことを教えてやろう。まず、我が名はアレク。周りからは漆黒の契約者と呼ばれている。そして、我が主はシオンという」
馬鹿な、シオンだと。その名は俺の友達と一緒の名前。まさか、こっちの道に入ったのか?
「教えてやれるのはこれくらいだな。で、俺が始末するか? それとも、お前か?」
「私がやる」
そのときだった。まさにヒーローの如くルシファーが助けに来た。俺は断っていたが、やはりこのときはルシファーがいてくれてよかったと思った。
「お前は、誰?」
「マシュー様の手下、ルシファー」
「そう、じゃあ死んでも文句はないな」
だが、簡単にサーシャの攻撃はルシファーに止められた。真の姿であるサーシャに対して、ルシファーは人の姿で、しかも片腕だけでだ。
「どういうことだ? ルシファー」
「今は話せません、申し訳ないがあとにしてください」
「…………」
ルシファーの力を見る限り、あの十の大魔王に匹敵するのかも、と俺は思っていた。だが、もしそうならばひょっとしてロドスも……。
「すまんが忙しいんでね、さっさと決着をつけさせてもらおう」
「ほざけ!! 私に勝てるわけがない」
だが、ルシファーは一瞬でサーシャを気絶させた。
「ほう、やるなお前。もしや十の大魔王の一人か?」
「言う必要はない」
「それもそうだな。だが、マシューは知りたいんじゃないのかな?」
「……愚論につきあう暇はない」
ルシファーが先に動いた。が、先ほどとは違い、アレクに余裕でかわされた。
「一応俺は十の大魔王になるつもりだからな。舐めてもらっては困る」
「契約者の分際でか?」
「悪魔でなかろうが力があればいい」
長い長い闘いが繰り広げられるかと思ったが、そこで新たな悪魔が現れた。銀髪のサングラスをつけた男。
「よお、アレク。調子はどうだ?」
「あんた……なぜここに……?」
ものすごい冷汗をかいていると思った。なぜなら、俺もこの男を前にして心底震え上がってしまったからだ。
「なぜって、シオンに言われたからな。お前らを見はれって」
「く……」
「お前は、シュド……なのか?」
ルシファーも少し心配な様子だ。
「いかにも、お前は天の王ルシファーだな?」
「……」
「まあいい、俺の前ではいつ存在を消されるかとびくついている奴が多いからな」
こいつは一体……。
「とりあえず、シオンから命令だ。いますぐ戻れとな」
「どういう……」
「口答えは関心せんな。いいから、サーシャをつれて戻れ」
「……わかった」
ありえない。こうも簡単に言うことを聞くなんて……。
「それじゃあ、お前らも一時休戦だ。力を蓄えてこの俺に挑んで見せろ」
こうして、奴らは去った。ただ、いろんな謎を残して……。