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暫くお待ちを
さて、
時は遡り
永保三年春、
北は奥州清原氏の惣領、
成衡の祝言に
一族の吉彦秀武が遠路訪れた。
「出羽吉彦の爺が参上下されました。」
控えに通された老爺秀武は
貴重なお寳(砂金)を持参するや。
うやうやしく捧げ持つと
「お館様にお執り成しを」
満面の笑みでやって来た。
暫くして、
「お館は如何…。」
「し、暫くお待ちを…。」
ところが
中々当主からの
呼び出しが無い。
奥では来客を他所に
当時流行りの
囲碁に夢中であったと云う。
温厚な老爺も次第に
顔色が青醒めて来た。