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兄弟の信任
その年の暮れ検非違使の府より出頭命令が有った。
「おお、源太殿。良参った。」
上機嫌で迎えられ義家も心は晴れやかだったろう。
「先程の石清水八幡宮の行幸、
お上には大変覚えがよかった。
感謝致すぞ。」
「有難き幸せに存じまする。」
「して今日呼び出したるのは他でも無い。」
「…」
「お上は思う事が御座って、
この度は春日社に行幸なさられるそうな。」
「近侍の兵として、
殿上人の間でもそなた達兄弟の信任も
厚くなって参った。」
「ははっ。」
「うむ。誠目出たきことじゃ。」
自分の事の様に手放しで喜んで貰い、
恐縮する二人だった。