3/15
検非違使
検非違使の府は御所に近い大きな館で有った。
陽射しの強い午後、
出頭を命じられた義家は弟の義綱他数名、
つわものを従えて参上した。
その頃、
戦闘集団の武士と云う存在は、
世間では確固たるものでは無く
検非違使の府では奇異の目を向けられていた。
検非違使の間でも
「あの無作法なものよ。」
と陰口が囁かれた。
「これはこれは源太殿」
厳つい御面相の義家の笑顔は阿部某の心を和ませた。
「この度、お上にあらせましては
石清水八幡宮に行幸との事。
その守護に当たられたい。」
「ははっ。源義家、
未熟者と云え身命を賭してお仕え申し上げまする。」
「そうか。
さすれば義家殿はお上のお傍を守護するには
無官にては相応しからず、
よって関白様の前駆を申し受けられよ。」
「ははっ。有難き幸せに御座りまする。」
「ご舎弟義綱共々ご奉公為されよ。」
「ははっ。」
義家は打ってかわった
神妙な顔で退出した。