少々眉を潜めた
その頃清原武衡は、
家衡に分が有ると見て加勢に出た。
「お館様。客人でございます。」
「誰か。」
「武衡様に御座ります。」
「よし、通せ。」
賑やかな声が聞こえて来た。
家衡は少々眉を潜めた。
家衡には苦手な性格では有った。
「家衡殿。無沙汰を致した。」
形ばかりの世間話に家衡も気が塞ぐばかりで
「武衡殿。何用で御座る。」
武衡は、はたと頭を掻き掻き、
「そこで御座る。わしは思った。
家衡殿こそ街道一の兵ぞ。」
「…武衡殿は何か所望か。」
「あ。いいや、正直申す。
分の有る方に付くのは世の習い。」
家衡は少なからず、
むっとしたが、
之も世の中と割り切りる事にした様だ。
「家衡殿、策を申し上げたい。」
「…。」
「我等、清衡、
義家軍に勝ち進む為には、
何と云っても要は難攻不落の要塞で御座る。」
「心当たりは。」
「勿論、無い事は無い。」
「ほっほう。如何な場所で…。」
武衡は、にやり、と笑った。
「心当たりは、金沢柵で御座る。」
家衡の目が光った。
「横手じゃな。」
「御意。」
寛治元年金沢に砦を作り
篭城した家衡らを取り囲んだ義家、
清衡軍は中々落ちな
い金沢柵に手を焼いた。
「何か程良い策は無いか。」
流石の豪胆な義家も
切歯扼腕、
苦り切った顔は力無かった。
「殿。申し上げます。」
その時一人、策を献じようとする男が居た。