13/15
秘策対秘策
思わぬところで所領を増やした衡家だったが、
それでも不満の様だった。
「清衡め、上手いこと騙しおって。」
応徳三年清衡の一族を攻め滅ぼした。
しかし、主人清衡は生きて居た。
この時清衡に助太刀したのが義家だった。
みちのくの冬は寒かった。
「むむっ。良く降りよる。」
「沼柵の小城も中々しぶとうご座る。」
「何のこれしき。」
しかし、攻め手の連合軍にとって
冬場の戦は条件が悪かった。
戦上手の義家も手の施し様が無かった。
春が近いと云うのに、
毎日毎日雪は止まなかった。
「殿。何を考えてござりまする。」
「ふん。」
「この謙正が当てて見しょう。」
「うつけ者め。」
「…。」
「沼柵の中じゃ、
きゃつ奴。笑って居ろう。」
「…。殿。詰まらぬ事は考えぬ事に御座りまする。」
「ふむ。」
「もうすぐ春。」
「何か良い策でも…」
「いいえ、しかし、時節も変われば
敵を手中に治める策も有るかと…。」
「うむ。判った。」