#2B「星天十二機神・アリエウス」
――アリフレタヒゲキニノマレ
――リユウナキアクイノハテニ
――エラバレタショウジョハネガウ
――ウソニマミレタセカイノナカデ
――スガタナキヒゲキノサダメトトモニ……
【出典 兵器物語 第二章 牡羊の詩】
その少女は何の変哲もない村娘だった。辺境の地で何不自由なく育ち、その村で人としての一生を過ごすはずだった。
だが、偶然にも彼女は選ばれてしまった。アリエウスの星座が素体として選んだのは、何の変哲もない少女だった。
同じ歳の子よりも少し背が低かったから。同じ歳の子よりも少し胸が大きかったから。同じ歳の子よりも少し大人びていたから。
ただそれだけの、ほんの少し違っただけだったはずなのに、その些細な違いによって彼女は素体に選ばれてしまった。
素体を選ぶ儀式、星導の儀。王都でその儀式が行われたのを境に、少女にとって地獄のような日々が始まった。
最初に住んでいた村が焼けた。偶然通りかかった魔族が少女を生け捕りにし、立ち向かう者も逃げる者も平等に殺し、村に火を放ってその場を離れた。
次に身体を穢された。魔族に捕らえられた少女は絶対服従の魔法を掛けられ、魔族たちの慰み者として奉仕を強要させられた。
村を焼かれ、家族を殺され、身体を穢され、心が壊れてしまった少女は世界に絶望した。そしてその絶望が少女を星々が待つ座へと至らせた。
星座に至った少女は絶望の中で祈った。その祈りにアリエウスは応え、その祈りを待っていたかのように王立騎士団特務部隊が現れた。
特務部隊によって魔族は瞬く間に殲滅され、少女はこれで助かったと思った。だが、それが勘違いだと気づいたのは王都に着いた後のことだった。
魔族に穢された少女は、検査と称して王立研究所の深層に運ばれていた。闇の魔力が人体にどのような影響を及ぼすのかを知るためだと。
少女はその言葉を信じて全身麻酔を受けた。深い眠りの中、少女は再び星座へと至っていた。そこで少女が目にしたのは、自分の姿だった。
『アナタヲ、タスケテアゲル……サア、テヲトッテ』
救いの言葉と救いの手を差し伸べる、自分と瓜二つの少女。訳も分からないまま、少女はその手を取ってしまった。
この誘いこそが始まりだった。星座の誘い、アリエウスの言葉を受け入れてしまった少女の心は、少女の物では無くなり始めていた。
次第に心はアリエウスの物となり、それに伴い少女を素体とする手術が進められる。数々の非人道的な行為の果てに、少女は魔工機械の体となった。
手術が終わり、少女は目を覚ました。星座との同調が進んでいる影響で、徐々に記憶は薄れ始め精神が酷く乱れ始める。
激しい頭痛と腹痛に何度も襲われ、何も出ない嘔吐を繰り返す。ようやく落ち着いた頃には、少女の面影はすっかり無くなっていた。
少女は完全にアリエウスの素体となった。ただの村娘だった過去は完全に消え去り、あるのは魔族を滅ぼすという強い意志だけ。
アリエウスとなった少女は、すぐに戦場でその力を振るった。専用の機装から放たれる無数の弾丸とミサイルは、数多の戦いで魔族たちの命を奪った。
星天機装・アリエウス。右腕と左腕、右脚と左脚、頭部と背部の計六つのユニットからなるアリエウス専用の星天機装。
両腕部には魔動式マシンガン、両脚部には小型補助ブースター、頭部には角型特殊センサーユニット、背部には四つのミサイルラックと二つの魔動式ヘビーキャノン。
質で攻めても勝てず、量で攻めても勝てず、戦場を選んだとしても魔動エンジンとブースターによって関係なく戦うことが出来る。
アリエウスは戦場に革命を齎した。アリエウスが舞い降りた戦場には勝利が約束され、魔王軍は撤退を余儀なくされた。
幾つもの戦場でアリエウスはその力を振るい、数多の魔王軍の命を奪った。それはもはや勝利の女神ではなく、畏怖の対象となっていた。
そのアリエウスも、もうこの世には存在しない。戦争が終わった世の中に兵器の居場所はない。殺戮兵器としか見られなくなった少女は、同じく殺戮兵器であるアマツの手によって葬られた。
――星天十二機神・アリエウスの物語 完――




