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【この結婚が終わる時】外伝 木蓮の花が咲く頃に  作者: ねここ


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18/31

恋と友情

 あの日以来コレットはミコトを訪ねてくるようになった。


 ただ、必ず護衛の騎士も一緒に来る。この神殿にコレットを襲う人間などいないと思っているだけに、騎士の存在が異様に感じていた。

 

 けれど、結婚を控えるコレットに何かあってはならないというジョルジュの配慮だと知ると納得しつつも複雑な気持ちにもなった。

 

 コレットはジョルジュに相応しいと言われるだけあり、優しさを賢さを、そして美しさを兼ね備えた女性でミコトもコレットが好きだ。


 好きなだけにコレットとジョルジュの結婚を祝いたい。だが、ミコトはジョルジュを愛している。純粋にコレットの結婚を祝えない自分に嫌気がさす。

 

 コレットはミコトの前ではジョルジュの話を一切しない。その気遣いのような態度も気になっている。だが、ミコトからコレットにそれを聞くことはできない。


 二日後に四度目の契りがある。

 その翌日ジョルジュとコレットは結婚式で着る衣装のチェックをする。だから契りが終わったらジョルジュは城に帰るとモーリスが言った。


「モーリスさん。いつもジョルジュ様の予定など私に仰らないのに、なぜ教えてくれるのでしょう?」

 

 ミコトは首を傾げながらモーリスに聞いた。

 ジョルジュは最初の一回目以降、朝までミコトと過ごしたことはない。城に戻る理由をわざわざ言われたこともない。だから今回も同じように何も言わなくて良いことだが、それを言う理由を知りたい。


 しかもコレットと結婚式の衣装を見に行くと言う一番聞きたくないことをわざわざ言ったモーリスの言葉にミコトは悪意を感じた。


 モーリスはその問いに慌てたような表情を浮かべ、ミコトに言った。

 

「……最近、コレット様と仲が宜しいようで、複雑なお立場でいらっしゃることは理解しておりますが、ミコト様は異世界の聖女様です。あまり深く関わらない方が互いのために良いと……気を回したのですが、気分を害されたようでしたら謝罪いたします。申し訳ございません」

 

 その言葉にドキッとした。モーリスの言葉は正しい。


 ミコトとコレット、仲良くなっても、その関係は危うい。それに、コレットがジョルジュをどう思っているのかはわからない。

 そして何より、五回目の契りが終わったらミコトは決めなくてはならない。ここに残るのか、それとも帰るのか。

 

(ジョルジュ様のいるこの世界に残りたい)


 日に日に増す思い。だが、コレットと結婚し、家庭を築くジョルジュを見続ける勇気もない。

 元の世界に戻る……終わらない時間を過ごす地獄のような世界。


 ミコトは決めかねている。どうしたいのか、自分がどうありたいのか。


 ジョルジュを愛する気持ちを隠したまま、コレットと友情を保ち、ジョルジュと接する。それを平然とやってのける勇気がまだ持てない。けれど、二人の幸せを願う自分も芽生えつつある。


 だからこそ迷っている。


 モーリスは黙って俯くミコトを見て頭を下げ部屋から出ていった。


   *


「ミコト、少し歩かないか?」


 食事を終えたジョルジュはミコトを散歩に誘った。邸宅を出て月夜が照らす薄暗い夜道を歩く。


 ジョルジュはマントを羽織りゆっくりとした足取りでミコトの隣を歩いていると、ミコトは立ち止まり暗闇に瞬く星を見つめた。

 

「ミコトの星はどこだろう?」

 

 ジョルジュも夜空を見上げいった。

 

「……どこでしょうか? 私にもわかりません」

 

 ミコトは正直に答える。異世界からここにきたのは事実だが、気がついたらここにいたと言った方が適切だ。

 

「ミコト、帰りたい、か?」

 

 ジョルジュは言葉に詰まったようにミコトに聞く。

 その言葉にミコトは唇を結び、正直に話す。

 

「……わかりません。正直に、本当にわからないです。ただ、帰ってもただ生きているだけの生活、意味がないと思ったり、でも……」

 

 その言葉にジョルジュはミコトの手を握る。

 

「ミコト、ここに残れ。残って柊とここにいてくれ」

 

 ジョルジュの言葉に喜びが湧き上がる。ジョルジュがここにいて欲しいと言った。夢のような一言。

 

 はい、と返事がしたい。だが、すぐに現実に戻る。

 

 ここにいても良いのだろうか?なんの役も立たない役目を終えたミコトが、魔法が使えないミコトがここにいることでジョルジュに負担をかける可能性もある。ミコトは正直に今の思いを言った。

 

「私は魔法が使えません。ここに残っても皆さんの役に立てるとは思えません……」


 その言葉を聞きジョルジュが語気を強める。


「そんなことはない! そんなことを考えるな」


 その言葉にミコトは首を振る。そんなミコトを見てジョルジュはさらに語気を強める。

 

「じゃあ役に立たないからと言ってミコトが言った、生きているだけの生活に戻るのか? 夢も希望もない人生を?」


 その言葉にミコトの息が詰まる。


「……そうですね。……ちょっと違うけれど私のいる世界はそんな人多いです」


「そんなミコトは見たくないな。ここでのミコトは目的のために真剣に生きている」


 ジョルジュは諦めたように話すミコトの言葉が気に入らない。


「…………私もそんな私を見せたくないです。でも、もしそんな私を見つけたら、殺してください! あ、以前私の希望聞きましたよね? うん、それが希望です。フフフ」


 ジョルジュはミコトの言葉に笑い始める。


「ハハハ! 確かに、目的のない人生を浪費するミコトを見たら、その為にここを捨てて帰ったのかと怒れるな!! 柊を王にした後の希望がそれだとは!!」


「え? ここを捨てた、だなんて!! ジョルジュ様、まだ何も決めていませんから!」

 

 ミコトの言葉にジョルジュは真剣な表情を浮かべ言った。

 

「ミコト、ここに残れ。ミコトがいてくれると……俺も、柊も、コレットも嬉しいんだ」


 (……コレット、も)

 

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