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【この結婚が終わる時】外伝 木蓮の花が咲く頃に  作者: ねここ


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始まり


これから始まる物語は異世界に召喚された娘と大魔法使いの物語り。


 


「モーリス、あれが異世界の聖女?」

 

 ジョルジュ・ジュベールは肩まである金色の髪を後ろに撫で付け、神殿の方を指差した。ジョルジュの視線の先に黒髪の女性がいる。その女性の黒い瞳は全てを諦めたように虚で生気がない。青白い顔に紅を塗ったような赤い唇はどこかエキゾチックな魅力はあるが、生命力に欠けた人形のように見える。

 

「はい、彼の方はミコトという名前の聖女でご神託の通り魔力がありません。ミコト様は神聖な存在。神官といえども男性である我々は触れることができない存在」

 モーリスはため息を吐きながらジョルジュを見た。


「……そんな神聖な人間を抱けと?」

 

 ジョルジュは顔を顰めモーリスに言った。


「……はい、ジョルジュ様ならご神託通りの結果となるでしょう」

 

「……モーリス、俺は女に苦労していないし、来るものは拒まぬ。だが、あの女は神聖な存在だとしても……好みでは無い」


 ジョルジュは口を尖らせながらミコトを指差した。


 ジョルジュはすっきりとした顔立ちに彫り深い骨格、澄んだ青い瞳は女達の心を捉え毎夜ジョルジュの部屋の前には女達が列をなし一夜限り関係を求めに来るのだ。ジョルジュには決まった相手もいない。虎視眈々とその座を狙う女達と一夜の関係を楽しむジョルジュ。そんな彼にどこか暗い印象のあるミコトは最も避けたい相手に見える。


「ジョルジュ様、気持ちはお察しいたしますが、これは創造の神メシエ様のご意志でございます。避ける事はできません」


 モーリスは申し訳なさそうに頭を下げた。ジョルジュはその言葉にため息を吐いた。


「わかった……努力する」

 

  *


「それで、ミコト……といったか? 彼女はどんな感じの人? 見た目どうり?」

 ジョルジュは建設中の城壁を視察しながらモーリスに聞いた。

「……不思議な方で、この世界に降臨された最初の三日間はベッドの上で寝たまま、起き上がることもなさいませんでした。そのまま……」

 

 モーリスは呆れ顔をし話を続けた。ただ、ジョルジュに悪い印象を与えてしまう事は避けたいと思いつつも、愚痴りたい気持ちが優る。

 

「ベッドに横になったまま何もせずじっと天井を見ていました。異世界からこの世界にこれらた際に大きな負担が身体にかかったのだろうと様子を見ておりましたが、流石に三日も飲まず食わずは……」

 

 モーリスは大きなため息を吐き話を続ける。ジョルジュは興味深そうに首を傾け続きを聞く。

 

「……ですから見習いの神官に手伝ってもらい、ベットのシーツを両端から引っ張って身体を起こしたんです。ミコト様はそれは驚いた顔をし……」

 

「フフ……大変そうだな」

 

 ジョルジュはその状況を想像し、笑いながら言った。

 

「……大変も何も、ミコト様に触れることもできませんから起こしたくても起こせません。で、起きたミコト様はキョロキョロと周りを見て、ベットから降り立ち上がったのですが、お腹が空いていたのか倒れられ……」

 

「で、シーツでベットに戻したのか? アハハ」

 

「……笑い事じゃありません。本当大変でした。それから食事を持って行き……」

 

 モーリスは言葉を止めた。

 

「どうした?」

 

 急に黙ったモーリスにジョルジュは声をかける。

 

「……あの方はお腹が空いていたのか手で、食事を……」

 

 困惑した表情を浮かべたモーリスに、ジョルジュは言った。

 

「三日も飲まず食わず、よほど腹が減っていたのだろう」

 

「いえ、ただ、驚いている私たちを見て手を止めて、突然神殿の中を歩き始めたんです。半日ほど色々見て歩き回られ、それから椅子に座り、フォークを使って食事を……とにかく、不思議な方で……」

 

 ジョルジュは見晴らしの良い場所から街を見渡した。


「モーリス、ようやくこの世界に平和が訪れたのは創造の神メシエのお陰だ。確かに神託どうり聖女が降臨した。しかし少し前まで世界が混乱しドラゴンと対立したのは全て我々人間の過ちだ。」

 

ジョルジュは眉間に皺を寄せ言った。

 

「はい。神聖なドラゴンの地に足を踏み入れ、ドラゴン王を殺したのは我々先祖の過ち。人間とドラゴン、どちらか滅びるまで続くこの戦いは大魔法使いであるジョルジュ様が現れたことで状況が変わりました。圧倒的な魔力はドラゴンの魔力をも凌ぎ、ようやくドラゴン達は彼の地に戻りました。そして創造の女神メシエ様の神託が降り、世界の安寧と均衡を保ち続けるために人間とドラゴンの仲介役、魔力のない異世界の聖女を召還くださった」

 

 モーリスは胸に手を当てジョルジュに頭を下げた。

 

「ああ、創造の神メシエが異世界から聖女を降臨させてくれたことによって、ドラゴン王を復活させ人間とドラゴンが再び共存できる世界を作る。ドラゴン王の長い寿命が尽きる頃、また異世界より娘が降臨する。その繰り返しによってこの世界は存続できるのだから、俺は俺の使命を果たそう。再び人間とドラゴンの終わらぬ戦いを繰り返すわけにはいかないからな」

 

「はい。ジョルジュ様はこの世界を代表する大魔法使い、そしてこの世界をまとめるお方です」

 

「ありがとう、俺はこの世界の幸せを願って戦ってきたが、異世界はどうなんだろうな。ミコトの行動も我々の考えでは理解できなくとも、何か理由があるのかもしれない。」

 

 ジョルジュは神殿の方向を見た。この神殿は元々はジョルジュ・ジュベールの邸宅。平民に近い貴族だったジョルジュは類稀なる魔法の才能を持ち、混沌とした世界でのし上がり今、新しい国を作ろうとしている。そして、創造の女神メシエの神託が降り、ジョルジュの邸宅は仮の神殿となり、その神殿に異世界の聖女ミコトは現れた。


 ミコトは先ほどと同じ場所、同じ瞳でマグノリアを見つめてる。


「ところで、契りの日は決まっているのか?」

 

 ジョルジュはモーリスの方を振り返り聞いた。

 

「契りの前にミコト様にはドラゴンの谷に出向き、ドラゴン王になるドラゴンを連れてきてもらわねばなりません」

 

モーリスは風をうけるジョルジュを見た。

 ジョルジュは男が見ても惚れ惚れするほど整った顔をしている。女達はジョルジュに夢中になっているが、ミコトはジョルジュを見て同じように感じるのだろうか?そんなことを考えモーリスは唇を結ぶ。

 

「魔法を無効にすると聞いた。だから行くことができるのか? 魔法を使うドラゴンの谷に……」

 

 ジョルジュはまたミコトを見る。ミコトは微動だにせずマグノリアを見ている。一見したら人形に見違えるほど表情は変わらない。唯一瞬きする時だけ人間だと認識できる。


「ジョルジュ様、二週間後にミコト様を谷に連れて行き、ドラゴンを連れ帰るまでに一週間、その後となりますので月末になるかと」

 

 モーリスもミコトを見つめながらジョルジュの問いに答えた。


 ニコリとも笑わない異世界の聖女。ジョルジュは五ヶ月が過ぎれば王として即位することが決まっている。聖女との契りは月一度、それを五回。五ヶ月後はドラゴン王も誕生する。そんな中での即位は誰もが素晴らしい国が誕生すると思うだろう。

 

 その前に、この神託が滞りなく随行されるよう神殿は総力を上げジョルジュの使命を支える。それがモーリスの仕事なのだ。

 

「……月末か。わかった」

 

 ジョルジュは短く答え、二人は黙ってミコトを見つめ続けた。


   

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