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10話 これからについて

 ぺろりと顔を舐められ目が覚めた。

 眼前には、淡い光を反射し光と影で構成された川の水面に遠くの木々を染めゆく曙空が広がりはじめていた。

 自分がうつらうつらしていると、次はベロンと舐められ顔が涎まみれになった。

 『なんだ?なんだ?』

 飛び起きると目の前には、大きい黒い犬がお座りしている。

 尻尾がユサユサ揺れている。

 どう反応しようか検討していると、横から声がかかった。

 「にいやん、おはよう」

 たまだ!

 『たま起きて大丈夫なのか?』

 「大丈夫だよ?」

 『よかった』

 「けど、たくさん力使ったからアーク体内に貯めないといけない」

 『それは、本当に大丈夫な状態なのか?』

 「うん、ただ力使えない」

 『そっか、昨日はそんな状態になるまでありがとう』

 『たまが、危ないところ助けてくれたんだろ?』

 犬が少し申し訳なさそうに下を向いた。

 「そうだよ」

 『最後俺が倒れ込んだ時、何が起こったか説明できる?』

 「にいやんを助けようと思ったら、大きくなって、ドーンと彼女にぶつかって、川に入れた」

 なるほど、一部始終は見ていないのだが……何故か想像通りだ。

 たまを撫でながら再度感謝を伝えた。

『守ってくれてありがとう』

『それで?この大きいワンちゃんは?』

『黒い光が川で流れ落ちて、悪化?から回復して害がなくなったの?』

「そうだよ」

 犬の方を見て聞いた?

『なんで?悪化したの?』

 犬は自分を見つめながら「わふわふわふわふ」と何か言った。

 そうしたらたまが通訳してくれた。

「親を殺された憎しみで、黒いアークを取り込み過ぎ、感情が抑えられなくなった。そうだよ?」 

 犬は言葉を発せられないが、たまよりも説明は上手そうだ。

 「わふわふわふわふ」

 「迷惑をかけてごめんなさい。あと、助けてくれてありがとうだってよ?」

 自分は、高い位置にある頭を撫でてやろうと犬に近づいた。

 頭まで手を延ばしたが、残念ながら後少し届かなかったので、犬が伏せをしてくれて、頭を撫でる事ができた。

 ちなみに犬の体高は、自分の身長が大体180cmで手を伸ばすとプラス1mの計2m80cmでギリギリ手が届かないから、やはり3mぐらいかな?とざっくり計算した。

 昨日の姿は、黒いモヤで現在の姿より大きく見えていたようだ。

 だが、犬は大きくてもやはり犬のようで、頭を撫でるとその分尻尾をぶんぶん振った。

 それを見ていると、愛おしくなり沢山撫でた。

『お前も色々大変だったんだな』

『親の分まで生きないと』

 そして犬が、返事とばかりにベローンとまた顔を舐めた。

 たまがその舐められた姿を、横目で一瞥して話し出した。

「にいやん、そいうことだから彼女がついてくるってよ?」

『えっどういうこと?』

 犬を見つめて問いかけた?

「ワフワフワフワフわふっわふわふ……っ」

「わふわふっワンワンわほわほワフ……」

「わふわふ」

 俺と犬は、たまをチラッと見た。

「……」

 たまが通訳した。

「よろしくだってよ?」

『いやいや、完全に今端折ったでしょ?笑』

 

 その後、たまが端折らず説明してくれたので話を整理すると。

 まず、犬の目的地は『大命樹』であり、目的地が同じなら助けてくれた瞬平と共に行きたいとの事だ。

 そしてなぜ『大命樹』を目指しているかと言うと、発端が3年前終決した戦争の話が絡むそうだ。

 なんでも犬が暮らしていたのは、ここからはるか北にあった、巨木に栄えた自由自治区の街。

 巨木の名を『黒硬樹』という。

 なんでも色の名を冠する木は、とても位の高い木だそうだ。

 犬は、そんな巨木を人と共に守護してきた一族の出であった。

 黒硬樹は、色を冠する木では珍しく自身の根本に人を住まわした。

 また、木の性質は非常に硬く尚且つ軽い。

その為、木材は武器の素材として重宝され、腕の良い職人が、手掛けた武器の硬度は、世界で一位二位を争う程だそうだ。

 それゆえに、黒硬樹が戦争に巻き込まれた。

 ある帝国が、高品質な武器を求め黒硬樹を支配下に置こうとした。

 だが、黒硬樹の民は敵国の主義主張と全く相容ず断固として戦った。

 その結果戦争の戦禍で、木が力を失い最終的に街と共に滅びを迎えた。

犬の一族も大半が、その戦争で人と共に戦い生命を散らしたと言う。

 それが3年前の戦争の概要だ。

 犬は3年前はまだ幼犬だった為、戦争の戦禍に巻き込まれないよう母犬と共に逃がされた。

 だか逃げる際に、黒硬樹の種と、新たに黒硬樹が育つ場所で種を蒔く使命を託された。

 犬は母犬と共に旅立ち、種が育つ場所を探し求め東西南北色々と赴いた。

 しかし、残念ながら結果に結び付かず、新たに『大命樹』の麓を目指していた。

 そして、その麓を目指している最中に、虫に襲われ母犬は子を守り生命を落とした。

 母犬のおかげで生き延びた犬は、1人で旅を続けたが、母を亡くした悲しみと孤独感に加え、殺したものへの恨みを募らせ最近悪化状態に移行し……今に至る。

 話を聞く限り犬が辿ってきた道は、非常に険しい道のりだった。

 この話を聞き、共に行動したいと言う犬の気持ちを無下にはできなかった。

 そして犬の話を聞いた後は、自分の現状を伝え、たまからも話を聞いた。

 だがたまは、たま自身のことをあまり把握できていない様子で、記憶喪失ではないがそれに近い状態であり、周りの状況や環境により記憶が突然湧き出てくる事があるようだ。

 ただ、瞬平を守り共に行動をしたいという意思は、なぜか常に持ち続けているとの事だった。

 なぜ?瞬平を守りたいのか?理由がわからず不思議な話だが、今までのたまの行動については合点がいった。

 あと確証は無いが、瞬平が家族の元に帰れるのか、はたまた探し出すのかは不明だが、家族と会うための鍵はたまが握っていると感じた。

 その後さらに話し合いが続き瞬平達は、今後の行動方針を定めた。

 1、『大命樹』に向かう。

 2、たまの回復

 3、瞬平の基礎能力向上(主に走力強化・体力強化)

 4、それぞれの探し物を探す(大命樹に着いてから)

 以上4つに纏まった。

 ちなみに3については、たまと犬の意見だ。

 現在いる地域は比較的安全だが、危険な地域を通らざる得ないので3は必須との事。

 あと、たま曰く瞬平は、身体を柔らかくした方がいいとの事で、訓練しながら身体を猫のように柔らかくするとのこと。

 要するに、大命樹に向かいながら、たまはあまり動かず回復に専念して、俺は猫に指示を仰ぎながら、犬に付き合ってもらい能力向上を図るそういう事だ。

 この話し合いの締めくくりに、犬に名前を尋ねたら名前はないとの事で、犬を『はな』と名付けた。

 はなは、名前をとても気に入ってくれたようで、尻尾をぶんぶんと振っていた。

 こうして、話し合いも無事?(九割方瞬平が話していたが)終了して、1人と2匹で、大命樹を目指し旅が動き出した。

 

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