第2章
第2章「甘くない・前半」
「久遠ー!!早く行こーよー!」
「ハイハイ...」
全く元気な奴だ。
今日は夏休みに入って最初の土曜日。
敬介と一緒に海に来ている。
男二人で海というのもなんだが
コイツが行きたいというものだからしょうがない。
言い出したら聞かないコイツの性格は
2ヶ月間の同居...もとい、
ルームシェア(?)でなんとなく掴めたような気がする。
「そんなに走って転ぶなよ。」
「大丈夫、大丈夫!!転ばないよ...って、ぶはっ!」
「......。」
ほら見ろ言わんこっちゃない。
普通砂浜で走るか?それも大の大人が。
「俺、あっちに居るから好きなだけ遊べ。」
「イエッサー!!!」
ほんと、子供みたい。
...俺は元々皮膚が弱いから、あまり焼けたくないのが正直なところ。
だから高校のときとか誘われても毎年断っていた。
付き合いが悪いとか、色々言われてたみたいだけど
地元から大阪の学校に行くことが夢だったから
どうせ連絡だって途絶えるんだし。
「ーおん?...久遠?大丈夫か?」
「...んあ?なに...」
俺はいつの間にか寝ていたようだった。
「あぁ、寝ちゃったのか。大丈夫、平気。」
「汗かいたろ?じゃぁ少しだけ海行こう!」
「そう、だな。行ってみようか。」
「じゃあいこー!!」
頼むから大声を出すな...。恥ずかしいから...。
それから俺らは日が暮れるまで遊び呆けてしまった。
「まるで子供だな。」
本当に遊びつかれたのか車の助手席でスースーと寝息をたてている。
一応高校を卒業するときに車の免許をとったから、
交通手段には困らないから楽だ。
「二宮、腹減った。」
「もうちょっとでサービスエリアだから、少し待っててな。」
「ういーっ。」
......。
ん??二宮??
敬介はいつも俺のことは「久遠」と呼んでいた、よな?
しかも声がいつもより高すぎる。
それに当の本人は俺の横で寝息をたてている。
時々、寝言を言いながら。
(からかってるのか...?)
「オイ、敬介。起きてんの?」
「......。」
「...寝てる、よな?」
「敬ちゃんならずうっと寝てるけど?」
「───────っ!!?」
だ、誰だ?
バックミラーに移った、高校生くらいの女の子...。
「───女の子!!??」
「しーっ!敬ちゃんが起きちゃうでしょ、せっかく寝てるのに。」
「あ、ハイ、スミマセン。」
なぜ敬語なんだ、俺!
しかも敬ちゃんって...。
「取り合えずここ高速だし、ほからないでね笑」
いっそのことそうしたいよ。
と、思ったが口ごもる。
大体、高校生相手にむきになってどうするんだ...。
「と、取り合えず座ってくれ!!」
「物分りいいね!あざすwww」
いや、俺は単純に折れただけだ。
こんな女の子を相手してると精気吸い取られそうだし、車が...
異様なほど、揺れていたからだ。
「で?何で君はここに居るのかな?」
すっかり寝入った敬介をおぶって隣でスキップしながら
歩いている女の子に問いかける。
「...なんでって、似てたから!」
「...は?」
「だって、リ×ーンに出てくるキャラクターに似てて、ついwww」
......。
なんだそれは。
ただそれだけの理由で不法侵入しやがったのか、このガキは。
(ていうか、そのアニメ、俺も見てたりするw)
「ちなみに、誰に?」
「勿論、正ちゃんw」
「え、そうか?」
そんなの初めて言われたぞ、オイ。
まぁ、それはいいとして
「...いい加減狸寝入りやめれ。」
「あれ?気づいてた?なーんだw」
「さっきから笑ってただろお前。」
「だって入江だよ?」
「知るか。正ちゃんなめんな。」
「ふっwwww」
「何だよ」
「んーなんか?ラブラブって感じぃ??w」
バシッ!!
「いったーい!」
「お前が悪い。」
なんかめんどくせーものつれてきちゃったかな?