吸血鬼ですけど、なにか?
お、お姉ちゃんってなんですか?私はアリエルさえいなければ天涯孤独だったはずですが。
というか、自分と同じくらいの背丈の人に頭を撫でられるって、なんか複雑な心境です。
「えっと?アリエル、この状況を説明してください?」
「あー、聞いてたと思うがニアには姉がいる。今は魔王をしてるらしいが、妹はいなかった。要はそういうことだ。」
「それは説明になっていませんね。なぜ、今、私は頭をなでられ、姉と呼ぶよう言われているのかを聞いてます。」
「だから、そのままだ。永年姉がいたが、妹がいなかった。だから妹が欲しかったが母親はもういない。妹が欲しすぎて色々拗らせた結果、私の娘に妹と呼べと言っているんだろう。」
「はあ。」
今も私の頭を撫で続けたらいるティターニアさんは同意するようにニコニコと笑っています。憎たらしいほど可愛らしいですね、この野郎。
「おかしいのは私にも分かるぞ。」
そうですよね。もしそうだとしても初対面で姉と呼べはしんどいですよね。
「姉というより従姉妹だ。」
「そうかもしれませんけど、そうではないですよね?」
「さて、そろそろ説明をお願いしてもいいかい?全く話が分からなくて別世界に迷い込んだかと思ったよ。」
そうですよね。私もそろそろ真面目に話すべきだと思います。それにあんな戦いが終わった後なので少なからず疲れていますし。
でも心配なのはこの状況を一番把握しているのがティターニアさんだけっていうところなんですよね。アリエルとも私たちとも繋がっているのは彼女だけですから。
「ティターニアさんじゃなくてお姉ちゃん、ね?」
ほら、こんなことを言い出す。しかも私の隣にちゃっかり座っていますし。
「ニア、勇者が言うようにそろそろ茶番も終わりだ。真面目に話せ。」
「はーい。叔母様がそうおっしゃるなら仕方ないですね。この話はまた後でにします。」
後でもしませんけどね?それよりアリエルもまともなことを言っているようですけど、私の膝の上に座っているのでよくてイーブンですよ?
勇者様とカレンさんの視線が痛いです……。私何もしてないのに。
「では簡潔に説明するとしよう。」
一転してティターニアさんから支配者としての威厳が放たれました。場の空気がピリッと引き締まったのを感じます。この話し合いの舞台がベッドの上ということさえ目を瞑ればベストですね。
「私たちは吸血鬼だ。」
ぶっこみますね。まあもう隠せないと思ったのでいいんですけど。いざとなれば逃げる覚悟もできています。アリエルと二人ならいけるでしょう。
さて、二人の反応はどうでしょうか。
「あー。まあそうだろうとは思ってたけど、ヨミもそうなんだ。そっちは驚きだね。」
「そんなのを聞いてるんじゃない。そもそも私たちが知らないわけないでしょ。」
おや?聞いていた話と若干違いますね。少なくとも嫌な顔をされるのくらいは覚悟していたんですけど。
でもそれは私だけでした。ティターニアさんは満足気ににやりと笑うと言葉続けました。
「そうか、それはよかった。これで話が進められる。」
えー……?一体どういうことですか?吸血鬼だっていうことで迫害されて、人数を減らしたとかいう話はどこ行ったんでしょうか?
「ティターニア、ちょっと待って。まだヨミが話についてこれてないよ。」
「ん?今の話のどこが分からなかった?そんな難しい話をしたつもりはないのだが。」
「いや、難しくはなかったんですが、吸血鬼っいうことが簡単に受け入れられたことに驚いたんです。聞いてた話だと吸血鬼は迫害によってその数を減らしたとかだったので。」
私の膝の上でアリエルが小さく体を動かしました。ティターニアさんも少し気まず気です。
「……あー、その話か。叔母様、私からしてもいいか?」
アリエルが無言で頷きました。え?そんな聞いてはいけないような話なんでしょうか?
「ヨミが聞いた話はおそらくこうだろう。
神話の大戦争の後に魔人や吸血鬼は迫害され数を減らした。獣人たちは人に嫌気をさして連合国を作った。」
確かめるようにティターニアさんが私の方を見てきたので小さく頷きました。
「獣人たちの歴史も、魔人と吸血鬼が数を減らしたというのも結果だけは合っている。が、その過程は全く違う。
ーーー吸血鬼たちを殺したのは人間ではなく、私たち真祖だ。」
「え?」
「そもそも人間に吸血鬼たちを駆逐でからと思うか?下位とはいえ吸血鬼を殺そうと思ったら時間がかかりすぎる。太陽の光で体を焼きながら殺すか、心臓を潰すくらいしか手段がない。そして吸血鬼は基本夜しか活動しないから前者は無理、後者も余程自力に差がないと厳しい。それに吸血鬼っていうだけでそれなりに強いからな、叩きのめせるくらいの強者はあまりいない。」
「ちょ、ちょっと待ってくださいね。吸血鬼の殺し方とか初耳ですしすごい衝撃的ですけど、でもそれ以上にお二人はこのことを知っていたということですよね?だとしたら何故こんな話が世界に広がっているんですか?」




