表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

8/145

感動の再会……というわけではなさそうですね

「そろそろ帰ってきますかねえ?」


 私と組んでいた時はだいたい日が暮れる前には帰ってきてたのでそろそろ帰ってくると思いますが。ギルドも帰ってきた冒険者達で少し騒々しくなってきましたよ。


「ふいー、今日もそれなりだったな。」

「そうだな!貯金は出来ねえが、今日の酒と飯の分は稼いできたぜ!!」


「相変わらず巣窟は簡単でいいなぁ!ドロップ品を回収するだけでいいし、魔物の死体を捌く必要もない。ダンジョン様様だぜ!!」

「まったくだぜ!」


「はあ、魔力不足でしんどいわね。普通のポーションよりも魔力ポーションは高いからこういう時には使えないし。」

「いいからお酒で流すわよー!!酔っちゃえばそんなの吹っ飛ぶんだから!!」


 ……皆さん元気ですねー。まあ冒険者ですからこれくらいですよね。彼らの保護者的な立場だったので一度も参加したことありませんでしたが、楽しいんでしょうか?いや、でもそもそも私には一緒に飲む人がいませんでしたね。


 ……なんか悲しくなってきました。帰ってしまいましょうか。アリエルもそろそろ眠くなってきたのかまばたきがゆっくりになっています。仕方ないので日を改めましょうか!いえいえ、帰るのがうれしいわけではないですからね!?


 そうと決まればさっそく帰りましょう、そうしましょう。ケッ!こっち見んな、酒飲みどもめ!!さっさと寝るんだよ!!


 ちょうど席を立ったその時、ギルドのドアが開きました。


「どうだ?俺たちと組んで一週間だが、正式にパーティーとして組まないか?同じDランク同士、一緒にCランクを目指そうぜ、コウセツ!!」


「そうだな、レオン!俺たちが組めばCランクなんてあっという間さ!ひとまずそれまでは組むぞ!」


 帰ってきたのは知らない4人組と一緒にいるコウセツ達でした。……まあ一応話だけは聞いてみましょうか。私のことを見つけた3人は顔を歪めていますし、何か言いたいこともあるんでしょう。


「コウセツ、ジュン、エリザ。少し話があります。時間はありますね?」


「あんたのために使う時間なんてないね!これから俺たちは新パーティー結成の宴会をするんだ!」


 私の質問に答えたのは想像通りコウセツでその声にはこちらを見下したような嘲りの色が込められていました。


「新パーティー?私はそんな話聞いていませんが?」


「そりゃそうさ。あんたはもう俺たちのパーティーメンバーなんかじゃない!!」


「少なくともパーティーリーダーは私だったので、あなたたちに私を追い出すことなんてできないはずですが?」


「そんなの簡単さ。俺たちがあんたのパーティーを抜けて、新しくパーティーを組んだってだけだ!」


 なるほど?確かにパーティーを組む時は全員で手続きをする必要がありますが、脱退するときはその人が行けばできますもんね。ということは私は今ソロということになっているんでしょうか。


「話は分かりました。では私とあなたたちのパーティーは既に解消されているということでいいですか、コウセツ?」


「当然だ!」


「ジュン?」


「もちろん!そもそもあんたは俺たちと釣り合ってなかったんだ!」


「エリザ?」


「当然よ!!私達のことなんて忘れてソロでやりたいようにやればいいじゃない!!」


 ……へえ。そういうことですか。

 心の中が急激に冷えていくのを感じます。いえ、そうではないかと思ってはいましたが、まさかここまでとは。


「……釣り合ってない?私達のことなんて忘れて?随分勝手なことを言いますね。自分たちでそうは思いませんか?」


「ッ!?」


 一体何度あなたたちを助けたでしょうか?苦手な剣を握ったでしょうか?モンスター相手に心もとない盾で向かい合ったでしょうか?使う魔法だってどれだけの制限をかけてたでしょうか?気を使って別に私一人なら魔法で事足りることをただあなたたちに教えるためだけに危険を冒したというのに。


 想像できませんかね、私がどんな気持ちであなたたちと時間を共にしていたか。後進育成だと自分に言い聞かせ、やりたいことを我慢してあなたたちができるだけ成長できるように、少しでも安全に冒険をできるように気を配ってきたんですが。


 ああ、そもそもあなたたちが頼んできたのでしょう?勇者様にも頼まれましたが、あなたたちも頼んできたはずです。それなのにこの仕打ちですか……!


『落ち着けヨミ、魔力が漏れ出してるぞ。』


 ペロッと肩に乗っているアリエルがなめてきたと同時に耳元で小さく囁いてきました。……え?あ、本当だ。しかも思った以上の量が出ていますね。私の前に立っていたコウセツ達だけじゃなくて一緒にいた4人の少年冒険者達も震えていますね。

 あれ?なんかここにいる冒険者達から見られていませんか?ええ?


「……ふう、まあいいでしょう。勝手にパーティーでも組んだらいいんじゃないですか?もう私は知りません。」


 そう言い残すと私は3人の横を通り過ぎて冒険者ギルドを後にしました。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ