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セロの作戦

 空中で一回転して体勢を整えたセロは再度浮遊魔法で飛んだ。


「クックック!あれでお前はおしまいか!?ええ?」


「そうだな。所詮俺は捨て石だ。」


 真上に目掛けセロが魔法を撃った。


 それを合図に少し離れたところで突然強大な魔力が沸き上がった。


「ほう?……手が震える。クックック!!それがお前らのとっておきか、面白れぇ!いいだろう、かかってこい!!俺とどっちが強いか、勝負だ!!」


 これから放たれるのはイチゴら3人による合体魔法。3人で火、水、風、光、闇のすべての適性を網羅しているからこそ放てる第6属性魔法(シックス・エレメント)。防御も耐性もすべて貫通する魔法の頂点の一つに数えられる強力無比な攻撃。そしてその3人に彼のパーティーメンバーであるマイがダメ押しで威力上昇のバフを複数回重ね掛けする。


 だが、セロはたとえその全力の攻撃がが当たっても確実に倒せるという確証を持てなかった。ゆえにこれから行うのはただの保険である。


「なあ、さっきようやく気付いたぞ。」


「あ?何がだ?」


「お前に攻撃が通らなかった理由だよ。」


 本当は確信を持って言えるようなものではない。セロの中にはまだ複数の可能性がある。スキルなのか、魔道具やそれに類するものなのか、それともそれ以外の何かなのか。


「なんだよ?言ってみろ。」


 セロの目的は少しでも自分に男の視線を向け続けさせること。他に意識が向かわないように。その間にも一番辻褄の合う答えを頭の中で探し続ける。


 ―――スキル、ではないはずだ。もしそうだとしたらさすがに俺の目でも見えるはずだし、そもそもあの男の性格からして隠したりはしないだろう。だとしたら一番信じられなくて、でも可能性としてはあり得てかつ辻褄があってしまう、そんな選択肢こそが答えだ。


「それはな、――――ただの魔力だ。」


「ッ!?」


 セロが答えを言った瞬間ピクリと瞼が動いた。が、それ以上にその瞬間に合わせ、男の腹部から剣が生えた。


 セロのパーティーメンバー、前衛のジョイマンが傷だらけの体のまま大剣を持って突っ込んできていた。男もその気配自体には気づいていたはずだが、突如彼のスピードが上がったために反応に遅れた。


 彼は自身のスキル活性化(アドレナリン)を発動させたのだ。そのスキルは一日に一度しか使えない上に副作用が大きく、効果時間が切れたら動けなくなるが、瞬時に全身の傷を治すことができるという代物である。ゆえに負傷兵から精鋭兵へと変貌を遂げた彼の攻撃を男は避けることができなかったのだ。


「ぐッ!……ぬうぅんっ!」


 うなり声と共にジョイマンを吹き飛ばしたが、今度は受け身を完全にとれたようで見えるような怪我を負っていない。


「ジョイマン!まっすぐ突っ込め!!」


「おう!」


 セロの推測が正しければ、男は魔力を絶えず渦のように自身の周囲に回らせているのだ。しかもそれ自体で攻撃になりうるほどの濃度で。魔力感知の発展、魔力支配の応用といったところだろうか。それに加えて男自身の超人的な反射神経と強靭な肉体が彼を無敵たらしめている。


 セロは男の反応からその推測が正しいことを確信し、ジョイマンに少しでもその魔力の鎧とでも言える層を剥がすよう指示を出した。実際にはそこまで詳しくはなかったが、二人の間には確固たる信頼があった。ゆえにジョイマンも即座に動き出した。


「なめんな!そんなもんは所詮付け焼刃だ!」


 男は腹部を貫かれたはずだが、まるで何事もなかったかのように立ち上がった。直後、その場に居合わせた全員の背筋が凍り付いた。


「スキルってのはよぉ!こうゆうものなんだよッ!!狂暴化(バーサクラッシュ)!!」


 男からあふれていた魔力が狂暴性を持ち、空間を侵食し始めた。魔法という形に変える前に盾となっていた今でさえ信じられないものであるが、それを完全に攻撃に転化させたのだ。


 それは結界魔法と類似したような印象を与えたが、その実本質は空間魔法の方に類似していた。要するに間接的な攻撃手段ではなく直接的な攻撃手段としてスキルの影響を受けた男の魔力は空間を支配していた。


「食らいやがれッ!!」



「……まったく、イライラするぜ。てめぇらみたいな与えられたものを自分のものだと錯覚するてめえらホルダーの傲慢さにはよ。なあ神眼、だったか?」


 ボタボタと目から血を流しながら男を睨みつけているセロに男は侮蔑の視線と嘲笑を向ける。


「スキルってもんを知りもしない、知ろうともしない。そんなお前らだから自分のものにできない。」


「……何の話だ?」


「……はぁ、分かってたことだが外れか。ったく、ギルドもAランクなんていういい加減なクラスを作りやがって。そのせいで戦わねぇとわからねぇじゃねえか。


 ―――なあ、勇者様よ。お前んとこの近衛は強いのが多かったぞ。」


 男が視線を向けた先には勇者が静かに立っていた。


「当然の話だよ。僕達はこの国を守らねばならないんだから。……でも不思議だね。なんで殺さなかったんだい?いつでもお前なら殺せただろうに。」


「勘だよ。お前が見てるのは分ってたからな。殺そうとしたら無理やりにでも割り込んできただろ?それにこいつらはゴミには違いねぇが、あんたの相手をしながらじゃ羽虫程度にはなっちまうしな。」


「……ヨミは死んでなかった。それに免じてお前のことも殺さないでおいてあげるよ。」


「クックック!勇者ともあろうものがえぐい殺気出しやがって!これ以上ワクワクさせんじゃねえよ!」

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